eコラム「北斗七星」

  • 2017.01.27
  • 情勢/社会

公明新聞:2017年1月27日(金)付



19年ぶりの日本出身横綱の誕生に沸く角界。稀勢の里の活躍に期待が高まるのは近年、外国出身力士の存在がそれだけ大きかった裏返しでもあろう。相撲の国際化に道を開いたのは、愛媛県八幡浜市出身で戦後初の横綱となった前田山英五郎だ◆強烈な張り手が得意で粗暴の力士と呼ばれ、異例のただし書き付きで大関から昇進。横綱の在位6場所は昭和以降最短で振るわなかった。しかし、後に外国人力士で初の関取となったハワイ出身の高見山大五郎を入門させた親方である◆一方、柔道でも1964年、東京五輪の無差別級でオランダのヘーシンクが金メダルを獲得、日本に衝撃が走った。彼を育てたのは同じ八幡浜市出身の柔道家・道上伯。欧州などで柔道の普及・指導に当たり、「心技体」という言葉を初めて使った人物といわれる◆「世界の、早く、強い時代の勢いの前には、伝統などというものは、ほとんど無意味なのである」。道上の手記には、当時の柔道界に風穴を開けるような進取の気性が感じられる。柔道は同五輪を機に正式種目になり、世界的な「JUDO」として認知されることになった◆国際情勢に目を転じると、先行きの不透明感を指摘する声が相次いでいるが、内向き志向や閉鎖的な発想では、新たな道は開けないと心得て、注視していきたい。(祐)

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