e貸切バスの安全対策 運行基準の順守を徹底させよ

  • 2016.12.09
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年12月9日(金)付



これから本格化するスキーツアーをはじめ、バスの安全運行がしっかり確保されることを期待したい。

貸し切りバス事業への罰則強化を柱とする改正道路運送法が、今国会で全会一致で成立した。今月中にも施行が見込まれる。これは、今年1月に長野県軽井沢町で起きた大学生15人が亡くなるスキーバス事故を受けたものだ。

公明党は、政府の事故対策検討委員会の初会合よりも先に、現地を調査した上で政府に再発防止策を提言した。改正法には公明党の主張も反映されている。

法改正の狙いは、悪質な貸し切りバス事業者の排除だ。1月の事故では、運行記録の記載不備など多くの法令違反が明るみに出た。

具体的な改正点は、▽事業許可に5年の更新を導入▽許可を取り消された事業者が再参入できるまでの期間を2年から5年に延長▽安全対策を怠った事業者への罰金を「100万円以下」から「1億円以下」に引き上げる―などだ。悲惨な事故をなくすために厳格な措置を定めたことは評価に値する。

改正法では問題業者への監査態勢が強化された。国は現在、バスやトラック、タクシーなど幅広い事業者を対象に監査を行っているが、担当職員は366人にすぎず、監査から処分まで平均8カ月かかっている。

そこで改正法では、監査を行う新法人をバス業界が設立し、各社を巡回指導する仕組みを導入した。国も2017年度に監査の担当職員を増員する方針だ。こうした官民の取り組みが効果を発揮することが望まれる。

とりわけ、バスの安全運行基準の順守を徹底させることが重要だ。

例えば、バス事業者が受け取る運賃には法令で上限・下限額が定まっている。だが、スキーツアーが集中する冬期は事業者間の価格競争が激しくなり、運賃が下限割れするケースが少なくない。そのしわ寄せはドライバーの人件費カットや長時間労働におよび、安全運行に支障を来しかねない。

経営が厳しい事業者もあるだろうが、客の命を預かる責任の重大さを忘れることは許されない。

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