eインフラメンテ会議 地方の「防災・減災」進める契機に 

  • 2016.11.28
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年11月28日(月)付



壊れてからでは遅い。老朽化した道路や橋といったインフラ(社会基盤)の事故は、市民の日常生活に影響を及ぼすばかりか、生命すら脅かしかねない。維持管理に向け、国を挙げた取り組みを急がなければならない。

国土交通省はきょう28日、全国の企業や大学、地方自治体などの産学官で構成する「インフラメンテナンス国民会議」を立ち上げる。目的は、メンテナンス産業の活性化と、技術やノウハウを総動員した自治体支援の展開だ。公明党が掲げる「防災・減災ニューディール」の理念を反映した取り組みであり評価したい。地方の防災・減災対策が前進する契機にしてほしい。

中央自動車道の笹子トンネルで起きた天井板落下事故(2012年)以来、インフラ老朽化に対する国民の関心は高まっている。多くのインフラは高度経済成長期に整備され、例えば、建設から50年以上経過した道路橋の割合は、13年3月時点で18%だったが、33年には67%に達する。対策は待ったなしの状況である。

ただ、道路橋の7割近くを管理する市区町村にとって、財政難による人材や技術力の不足が深刻だ。点検実施率は低く、早急に修繕が必要な橋や道路の割合は高い。

道路橋に限らず、財源が制約される中で老朽化対策を進めるには何が必要か。この点で鍵を握るのが民間との連携だ。建設業界に限らず、IT産業など幅広い分野の英知を結集することでこそ人材不足を補い、コスト削減を図れるのではないか。ここに国民会議創設の狙いがある。

メンテナンス産業の拡大も進めたい。メンテナンス事業の多くは維持や補修作業で、新規建設ほどの収益に結び付かない点が人材不足の一因とされる。老朽度診断といった新技術が求められる分野への参入を促す工夫のほか、人材育成や技術継承に向けたメンテナンス従事者の資格制度創設なども検討すべきだろう。

「市民参画」の視点も国民会議の柱の一つだ。千葉市では、市民が発見したインフラの異常をスマートフォンなどで市に報告してもらう取り組みを行っている。各地でも参考にできるものであり、こうした先進事例を国民会議の場で幅広く共有してもらいたい。

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