eコラム「北斗七星」

  • 2016.11.28
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年11月28日(月)付



人前で「箸にも棒にも掛からない奴」と突然ののしられたことがある。言った方はそんなことはとっくに忘れているだろうが、今でもその場面はよく覚えている◆心に刻まれた傷。「ばいきん扱い『つらかった』」「でも、しんさいでいっぱい死んだから いきるときめた」という見出しの記事(朝日新聞)を読み、よみがえってきた◆福島第一原発事故で福島県から横浜市に自主避難した中一男子生徒が、転校直後の小学生時代から、いじめを受け不登校になった問題。見出しの言葉がある生徒の手記が公表された◆自主避難は小二の時。名前に「菌」を付けられた。小五の時に「ばいしょう金あるだろ」と遊興費などをせびられた。その額約150万円。子どもとは思えない悪辣で卑劣な振る舞いに怒りを覚える◆被害者なのに差別され、救済の金銭的補償さえねたまれる。人々の間に埋めがたい溝を生み出した水俣病のことが思い出された。患者の代弁者として「苦海浄土」を書いた作家の石牟礼道子さんが以前、次のように語っていた◆「近代化された標準語では他人、他者ですが、私が生まれた天草では『人さま』と言います。人さまを大切にする、隣人を大事にする(略)。人さま方の苦しみをわかる人が増えてほしい」。そんな社会をめざし努力していきたい。(六)

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