e憲法論議 公明の考え

  • 2016.11.18
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年11月18日(金)付



衆院審査会 北側一雄副代表の見解(要旨)



17日の衆院憲法審査会における公明党の北側一雄副代表の意見表明の要旨は次の通り。

今後の論議では
(1)国民の理解が不可欠
(2)少数意見に配慮を
(3)政局から離れ冷静に


「国民の意思で制定」は明白


70年間、広く浸透し支持される


押し付け論

ポツダム宣言の受諾、終戦、占領統治などの激動の当時は言うまでもなく、敗戦国日本は極めて厳しい国際環境にあった。占領統治に当たる連合国総司令部(GHQ)をはじめ、占領統治の最高機関であった「極東委員会」、その出先機関である「対日理事会」など、戦勝国による外的圧力下にあった。

1945年12月から、日本政府の新憲法制定への動きが本格的に始まるが、46年2月13日、GHQから日本政府側に、いわゆる「マッカーサー草案」が公布され、これを基に「憲法改正草案要綱」、さらに「憲法改正草案」が作成された。

このことを捉え、一部に、占領下で作られた「押し付け憲法」であり、自主憲法の制定が必要との意見がある。

私たちは、GHQの関与の下で新憲法が制定されたことは事実であるとしても、こうした考え方には賛同できない。


▼国会の修正

なぜなら、第一に、憲法改正草案は、6月20日衆院に提出されるが、枢密院、衆院、貴族院という3段階の審議を経て、数多くの修正がなされ、それぞれ圧倒的多数で新憲法改正案が可決、成立している。衆院では、賛成421票、反対8票で、共産党が反対している。共産党の反対の主な理由は、天皇制が存置されていること、そして憲法9条に反対のためだ。


▼良識と総意

第二に、新憲法制定時の首相である吉田茂は、「押し付け憲法」という批判に対し、著書『回想十年』では、次のように述べている。

「押しつけられたという点に、必ずしも全幅的に同意し難い」とし、その理由として、「(GHQは)交渉経過中、徹頭徹尾"強圧的"もしくは"強制的"というのではなかった。わが方の専門家、担当官の意見に十分耳を傾け、わが方の言分、主張に聴従した場合も少なくなかった」「議員のうちには、第一流の憲法学者をはじめ、法律、政治、官界のいわゆる学識経験者を網羅しており、しかもこれらの人々は占領下とはいいながら、その言論には何等の拘束を受くることなく、縦横無尽に論議を尽くしたのである。すなわち憲法問題に関する限り、一応当時のわが国の国民の良識と総意が、あの憲法議会に表現された」と述べている。


▼再検討の機会

第三に、極東委員会は、46年10月17日、新憲法が真に日本国民が自由に表明した意思によってなされたものであることを確認するため、日本国民に対して再検討の機会を与えるべきである旨を決定し、これを受け総司令部も、憲法施行後1、2年以内の憲法改正の検討を提案したが、政府は改正の必要なしとの態度をとっている。


▼民主化の基礎

第四に、日本国憲法公布から施行までの間に、新憲法に基づき、わが国の数多くの基本法制が制定される。皇室典範、国会法、旧参院議員選挙法、内閣法、裁判所法、地方自治法、旧教育基本法、学校教育法、財政法、労働基準法などだ。全て戦後民主主義の基礎となった法律だ。「押し付け憲法」で、果たしてこのような詳細な基本法制が整備されるものだろうか。

そして、何よりも日本国憲法はこの70年、国民に広く浸透し支持されてきた。「押し付け憲法」という主張自体、今や意味がないと言わざるを得ない。


平和、発展に大きく寄与


「加憲」方式ふさわしい 憲法全体の改正は非現実的


3原理


日本国憲法は、わが国の民主主義を進展させ、戦後日本の平和と安定、経済発展に大きく寄与してきた。国際社会からの信頼も広げてきた。特に、国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義の3原理は、過去幾多の試練に堪え確立されてきた人類普遍の理念であり、これからも堅持されなければならない。私たちは、この日本国憲法を優れた憲法として評価している。

しかしながら、憲法制定から70年を経過した。時代も大きく変化し、制定当時想定できなかった課題も明らかになっている。また、現行の規定のままで不都合があるならば、憲法の基本原理はあくまで維持しながら、条項を付け加えていく方法、いわゆる「加憲」方式で憲法改正論議を進めゆくことがふさわしいと考える。

また、憲法改正案は最終的には国民投票に付されるが、まず「憲法改正原案」は、内容において関連する事項ごとに区分して個別に発議することとなっている(国会法68条3)。そして国民投票は、憲法改正案ごとに一人一票で、賛成または反対の文字をマルで囲む投票方式となっている(憲法改正国民投票法47条、57条1項)。

従って、日本国憲法の全体もしくは数多くの項目の改正案を一括して国民投票に付すことはそもそも想定されず、現実的にも「加憲」という方法で憲法改正論議を進めるしかないと考えられる。


審査会

今後の憲法論議は、両院の憲法審査会で着実に議論を進めることになるが、その際、次のことが重要と考える。

第一に、国民にオープンに論議を進めるということ。何よりも国民の理解を得つつ論議を進めることが不可欠だからだ。

第二に、これまで通り少数意見に配慮し、発言の機会を保障すること。

第三に、時の政局から一歩離れて、冷静に憲法論議を積み重ねること。

以上のことを、憲法審査会として確認することをお願いし、私の本日の意見表明とする。

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