e治療と仕事の両立

  • 2016.11.08
  • 情勢/解説
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公明新聞:2016年11月8日(火)付



政府「働き方改革」で支援策議論



1億総活躍社会の実現へ向け、政府は「働き方改革」に関する施策を推進する中、病気の治療と仕事の両立に力を入れている。先月下旬に開催された政府の「第2回働き方改革実現会議」では、有識者からの具体的な提案を基に活発な議論が行われた。両立支援をめぐる現状や論点を解説する。


時短勤務や長期休暇など社内制度の整備が急務に

「主治医、会社、産業医・カウンセラーのトライアングル型のサポート体制はいいアイデア。どのような形があり得るのか検討したい」。実現会議の席上、有識者の意見を聞いた安倍晋三首相はこう述べ、治療と仕事との両立支援に全力を挙げる姿勢を示した。

厚生労働省の調査によると、日本の労働者の約3人に1人が、高血圧や糖尿病、アレルギーなど何らかの病気を抱えながら働いている。中でも、これまで「治らない病気」とされてきた、がんは、診断技術や治療方法の進歩により、「長く付き合う病気」に変わりつつある。「通院しながら働きたい」という患者は、ますます増えることが予想される。

だが、病気を理由に仕事を辞める人は後を絶たない。例えば、厚労省研究班の調査によると、がんで離職する人は34%に上り、約40%が治療開始前に辞めている。

また、患者側の要望を調べると、勤務時間の短縮や長期休暇の取得、柔軟な配置転換が可能となる社内制度を求める声が非常に多い。病気や後遺症に対する企業の理解も必要だ。

がん以外の病気では、厚労省の別の研究班の調査によると、糖尿病患者の約8%が仕事や学業の忙しさなどを理由に通院を中断している。

さらに、患者にとって相談体制の整備が重要となるが、医療機関における就労支援は量、質ともにまだまだ足りない。がん診療連携拠点病院(全国約400カ所)における就労専門家の配置や、ハローワークとの連携体制が整っているのは、約38%にすぎない。

厚労省 個人プランの作成促す 疾患別マニュアルも策定

こうした現状を背景に、厚労省は今年2月、治療と仕事の両立実現をめざし、企業向けにガイドラインを作成した。

この中で、労働者と主治医、企業との間での支援の進め方や具体的な対応などについて明記し、個人ごとに支援プランをつくることが望ましいと提言している。厚労省は働き方改革実現会議の議論を受け、ガイドラインの普及を急ぐとともに、新たに企業向けの疾患別サポートマニュアルを策定する方針だ。

両立支援への取り組みは、労働者の健康管理はもちろん、企業にとっては人材の確保・定着を促し、労働者のモチベーション(意欲)を高めることなどにつながる。

厚労省は今後の対応として、経営トップや管理職の意識改革の必要性を強調し、休暇制度の整備やテレワークの活用などを通じて社内制度を充実するよう求めている。産業医やスタッフによる相談体制の強化も不可欠だ。

一方、医療機関に関しては、診断当初から就労について相談できる病院などを増やすことも検討している。

病気を抱える労働者が働き続けやすい環境づくりへ、患者本人が病気への理解を深めるとともに、医療機関と企業の取り組みを後押しする施策が一層求められている。



がん対策で優良企業を表彰 東京都


東京都は、がん対策の一環として、従業員ががんになっても治療と仕事を両立できるよう積極的に取り組んでいる企業を表彰している。2015年度の受賞事例を紹介する。

株式会社アートネイチャー 社員の相談窓口や再雇用制度を整備。本人の希望を確認し、時間短縮勤務や時差出勤など個別に対応している。

株式会社大京 がんに限定した休暇制度や休職中の経済的支援を実施。社内イントラネットなどを活用し、人事部直結で社員からの意見・要望を把握する体制を整備している。

大鵬薬品工業株式会社 産業看護職を中心とするきめ細かいフォロー体制を確立。がん患者の休業期間延長や再雇用制度、キャリア転換制度などを整備している。

中外製薬株式会社 長期休業者や復職者を対象に、産業医や心理職との定期的な面談を実施。がんの通院治療時に1日単位で休暇を取得できる。

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