eコラム「北斗七星」

  • 2016.11.02
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年11月2日(水)付



2年近くに及ぶ洋行だった。岩倉具視が特命全権大使を務めた、いわゆる岩倉使節団は、1871(明治4)年の11月、欧米歴訪に旅立つ◆約4カ月滞在した英国では、「世界の工場」の生産力やスケールに圧倒される。自由貿易体制の下で英国製品が世界に広がり、同国の経済を潤すことも目の当たりにした。使節団の報告書である米欧回覧実記には、「貿易ノ道ハ、世界必要ノ務メタリ」とある。「明治維新と西洋文明」(田中彰

岩波書店)に教わった◆今、その自由貿易が揺らぎ、輸入を過度に制限する保護主義の機運が高まっている。リーマン・ショック後の世界経済の回復の遅れもあるが、内向きになる各国の政治の潮流とも無縁ではない。英国の欧州連合(EU)離脱宣言しかり、環太平洋連携協定(TPP)の承認に反対する2人の米大統領候補しかりである◆来年の欧州は、大統領選や総選挙など有権者の審判を仰ぐ政治日程が目白押しだ。移民・難民やテロの問題が国論を二分する国では、反グローバリズムが一段と高まるかもしれない。その余波は自由貿易の動きにも押し寄せるだろう◆しかし、グローバル化に背を向けても解決にはつながらない。グローバル化のもたらす課題を、どう矯正するか。それが重要だ。泉下の岩倉卿も賛同してくれるに違いない。(明)

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