e介護離職の防止 助成制度を両立支援の弾みに

  • 2016.10.24
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年10月22日(土)付



働く人が家族の介護のために仕事を辞めてしまう「介護離職」の防止へ、柔軟な働き方ができる環境づくりが進むことを期待したい。

企業に介護離職を防ぐ取り組みを促す「介護離職防止支援助成金」が19日、創設された。従業員の仕事と介護の両立に向け、アンケートの実施や相談窓口の設置など職場環境の整備を進めた上で▽「介護支援プラン」を策定し▽介護休業や時差出勤などの支援制度を実際に従業員が利用すれば、助成の対象となる。

具体的には、従業員の誰かが(1)介護休業を1カ月以上取得した場合、大企業に40万円、中小企業に60万円(2)時差出勤などの制度を3カ月以上利用した場合、大企業に20万円、中小企業に30万円―が支給される。いずれも助成は2回(無期雇用者1回、期間雇用者1回)まで。

この制度で重視すべきは、助成金が支給されることよりも、仕事と介護の両立支援に関する知識や経験を蓄積できる点にある。企業には、介護離職を招かないような職場環境の整備に役立ててほしい。

実際、介護休業一つを取っても普及していない現状がある。総務省の調査では、介護休業の利用率はわずか3.2%。厚生労働省の調査によると、利用しなかった理由は「制度がない」が就労者の27.3%、離職者の45.3%に上り、「仕事を代わってくれる人がいない」が就労者、離職者ともに2割を超えている。

まずは経営者の意識改革が必要だろう。トップ自ら利用を促し、制度を使いやすい環境を整えるべきだ。介護の問題を抱える従業員は業務の中核を担う40~50歳代が多く、的確に対応できなければ全体の業務に支障が出かねない。

従業員への丁寧な情報提供も欠かせない。介護は育児と違い、突然、対応を迫られる上、10年以上の長期間に及ぶことも少なくない。こうした事態に直面した従業員の不安は募るばかりであろう。それだけに、介護をしながら仕事を続けるための公的制度や企業としてのサポート体制などについて、あらかじめ周知することを忘れてはならない。

介護離職は、従業員本人はもちろん、企業にとっても大きな損失だ。官民一体で防止に取り組むべき課題である。

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