e消費者トラブル 泣き寝入り防ぐ新制度生かせ

  • 2016.09.23
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年9月22日(木)付



「購入したマンションが耐震基準を満たしていなかった。事業者に修理費用を求めたい」「高額な商品を買ってモニターになれば毎月報酬がもらえると聞いていたのに、いっこうに支払われない」

昨年、こうした消費者トラブルに関する相談は全国で93万件に及んだ。しかし、弁護士に交渉を依頼するなど具体的な行動に移る人は39%、訴訟を起こす人は0.8%しかいない。訴訟には費用や手間が掛かる上、必ずしも裁判で勝てるかどうか分からないからだ。多くの人が泣き寝入りを余儀なくされていることは想像に難くない。

こうした人たちを救済する新制度が来月から始まる。「消費者裁判手続特例法」に基づくもので、政府の認証を受けた消費者団体が被害者に代わって企業を訴え、新たに被害金の返還などを要求できるようになる。事業者に比べて弱い立場にある消費者にとっては心強い制度であり、一人でも多くの被害者の救済に役立つことを期待したい。

新制度は、悪徳商法や商品の欠陥などで多数の被害者が出ていることが条件。訴訟の流れは(1)消費者団体が訴訟を起こし、裁判所が企業に賠償義務があるか判断する(2)義務があると認められた場合、消費者団体がホームページや電子メールなどを通じて被害者に裁判への参加を呼び掛け、裁判所が被害者個々に賠償額を決める――の2段階。

被害者は裁判にかかる負担が軽減されるだけでなく、勝訴を前提に裁判に参加できる利点がある。企業側にとっても一括してトラブルを解決できることから、負担軽減につながると評価する声もある。

政府は今後、消費者、事業者、双方への周知に努めることになる。制度の認知度が高まれば、訴訟を恐れて悪徳商法などが減少する効果も期待できるのではないか。

新制度を機能させるには、消費者団体の力量がカギを握る。しかし、多くの消費者団体は人員や財政の面で苦労しているのが実情だ。団体への支援事業に使える交付金を拡充してはどうか。全国の消費生活センターに寄せられた相談情報を収集する「全国消費生活情報ネットワークシステム」を活用した消費者団体への情報提供も一案だろう。

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