e福島再建へ歩む(1)

  • 2016.09.21
  • 情勢/社会
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公明新聞:2016年9月21日(水)付



官民合同チームと共に
風評払拭へ具体的な助言



東京電力福島第1原発事故で被災した福島県相双地域など12市町村の事業者を対象に、高木陽介経済産業副大臣(原子力災害現地対策本部長、公明党)が最高責任者となり、生業の再建を支援する「福島相双復興官民合同チーム」(以下、官民合同チーム)は、昨年8月の創設から1年余が経った。同チームは、国と県、民間団体で構成され、これまで約4200事業者を個別に訪問。何度も足を運ぶ中でそれぞれの課題やニーズに耳を傾け、きめ細かな対応を積み重ねている。福島の事業者が、官民合同チームと共に再建への道のりを歩む様子を追った。


川魚養殖(田村市)

「ようやくイワナやヤマメ、ニジマスを出荷できるようになった。でも、勝負はこれから」。福島県田村市都路地区で川魚の養殖から販売・加工まで手掛ける「吉田水産」の吉田栄光さん(37)は、東電福島第1原発の事故で大きな被害を受けたが、今では約90万匹を養殖するまでにこぎ着けた。

吉田水産は、1964年に旧都路村岩井沢で創業。震災前には、年間約400万匹の川魚を出荷していた。しかし、2011年3月11日に東日本大震災、その直後に原発事故が発生。事故現場の東電福島第1原発から20キロ圏内に位置する都路地区の一部は、立ち入り禁止の地域に指定された。

これに伴い、吉田さんは、都路での養殖を続けられなくなった。「これから先、どうすればいいか分からなくなった。目の前が真っ暗になった」。養殖への思いを捨てきれないまま、吉田さんは、原発事故後の約3年間、市内の別の地域で避難生活を送りながら会社員として働いた。

14年4月、ようやく都路地区の避難指示が解除された。吉田さんが、愛情込めて育てていた川魚は既に全滅。養殖施設も壊れてしまっていた。再開か廃業かで葛藤した。それでも、「自分が育てた川魚を待ってくれる人のために」と再開を決意した。

事業再開に向けては、複数の被災企業がグループとして再建計画を作り、工場や施設の復旧・整備費の4分の3を国と県が補助する「グループ補助金」を活用し、いけすなどの養殖施設を再建できた。しかし、最大の壁が立ちはだかった。原発事故による風評被害だ。


出荷再開、薫製づくりに挑戦

途絶えた販路の回復にも難航を極める中、15年10月に官民合同チームの初訪問があった。吉田さんは「最初はすぐには信用できなかった。でも、何度も訪問を受けるうちに心を許すようになった」と語る。

吉田さんは、官民合同チームのアドバイスを基に今年4月、出荷を本格的に再開することができた。さらに官民合同チームは、風評払拭へ販路開拓に関する具体的な助言を重ね、薫製に関する専門家を紹介。吉田さんは現在、川魚の薫製製品の生産・販売をめざしている。

官民合同チームは、事業者それぞれの課題を解決する一方、吉田さんらの声を基に、事業再開に向けた初期投資などで中小・小規模事業者にとって使い勝手のよい補助金の創設にもつなげた。吉田さんは「官民合同チームのおかげでここまでこれた。今後は、都路の復興に貢献できるよう事業を拡大していきたい」と意欲を燃やしている。

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