e孤食から楽しい食事に

  • 2016.09.16
  • 生活/生活情報

公明新聞:2016年9月16日(金)付



「こども食堂」で子育てを応援
地域ぐるみの取り組み広がる
静岡・富士市



こども食堂のオープンは毎週水曜日の午後5時。開店15分前には、まちづくりセンター入り口に設けられた「食券売り場」に小学生が並び始めた。200円で食券を買い、2階の会議室(食堂)へ駆け上がる。調理室では20人ほどのスタッフが4台の調理台をフル回転させ、50人分の料理を手際よく仕上げていく。

スタッフの自慢は「多彩なメニュー」と「手作りの温かい料理」。食事はバイキング方式で、毎回15品ほど並ぶ。おのおのにワンプレートで出す(一つの皿に数種類の料理を乗せる)より手間はかかるが、「大皿が並ぶテーブルを囲んでワイワイガヤガヤと料理選びを楽しんだり、異年齢の子どもたちが相手を気遣ったりするようになった」(富士見台小・放課後児童クラブ会長の宇佐美弘さん)。また、「いつ来ても温かい料理が食べられるように」と、食堂の人数を確認しながら料理を温め直したり、新しく作ったりと、閉店の午後8時まで気を抜けない。

この日のメニューはナスのはさみ揚げ、もやしとニラのナムル、サトイモとナスのとろとろ煮など野菜中心。もちろん、鶏の唐揚げや焼きそばなど子どもの大好物も忘れない。野菜が豊富なのは、地元の農協「北部産直きずな」が前日の火曜日に新鮮な野菜を提供してくれるからだ。その日の野菜の種類と量を確認して、他の食材を「少しでも安い店を求めて」買いに走る。あとはスタッフの腕の見せどころ。栄養バランスを考慮しつつ、子どもが食べやすいよう野菜と肉などの組み合わせに知恵を絞り、ハート形や星形に育てたきゅうりを出すなど見た目にも工夫を凝らす。

こうした食事が好評を博し、初回は親子一組だった"客"が、多い時で50人を超えるまでに。


公明議員が主催団体を全面サポート

大庭さんが、こども食堂の開設を思い立ったきっかけは一組の親子との出会いだった。同市富士見台に引っ越してきた5年前、子ども同士が仲良くなり、知り合ったお母さんがシングルマザーだった。うつ病を患っていた彼女は起き上がることができず、子どもに満足に食事を与えられなかった。それがストレスとなって病状が悪化し、間もなく亡くなった。大庭さんは大きなショックを受けた。

地域にはシングルマザーが増え、夕食時に子どもがスーパーで菓子パンを一つだけ買い、一人で食べている光景も見掛けるようになった。そのたびに友人の死を思い出し、心が痛んだ。「いろいろな事情で十分に子育てできない家庭が少なくない。何とか地域で応援できないだろうか。誰かがやらなければ」と悩んだ末、こども食堂の開設に思い至った。早速、ボランティア団体を立ち上げると、賛同したPTAの仲間や民生委員、元教員など25人が協力を申し出た。

開店までに、食堂の場所や食材調達などの課題が山積していたが、早川県議と望月市議が全面的にサポート。「両議員のおかげで無事にオープンにこぎつけられた」と感謝する大庭さん。開店からまだ3カ月だが、「楽しい食事は子どもの成長に欠かせない環境。だから、こども食堂は地域の子育て応援なのです。大勢の大人から声を掛けられ、子どもたちにも『周囲の大人から見守られている』という気持ちが芽生えます」と、地域ぐるみの広がりへ意欲を見せる。

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