e中小企業でも育休を

  • 2016.09.09
  • 情勢/社会
[画像]メインイメージ

公明新聞:2016年9月9日(金)付



活躍する育児プランナー



育児休業(育休)の取得など、仕事と家庭の両立支援は、優秀な人材を確保したい企業にとっても、女性の活躍を推進したい政府にとっても重要な課題。だが、規模が小さい企業ほど取り組みが遅れがちだ。厚生労働省は、こうした企業に対し、育休取得・復帰を支援する育児プランナーの派遣事業を展開している。誰もが働きやすい職場環境をめざし、活用する企業が増えている。


会社に無料で派遣 休業の計画づくりを支援

「仕事と子育てを両立できるという自信が持てなかった」。結婚から間もなく、福岡市内の中小企業を退職したN子さん(38)は語る。

女性の育休取得率は81.5%と高く、その9割以上が復職している(2015年度厚労省調査)。ただ、これは制度利用者の場合であって、第1子出産を機に約6割が退職しているのが実情だ。出産後のサポートが不十分で、やむなく事前に職を辞す例は少なくない。

また、従業員数が少ない企業ほど育休の取得率が低い傾向にある。冒頭のN子さんは「就業規則はあっても労務管理に手が回らず、相談できる雰囲気もなかった」と明かした。

育児プランナーは、こうした中小企業に出向き、育休取得から復帰までの計画「育休復帰支援プラン」づくりを無料でサポートする。

厚労省から事業を受託した株式会社パソナが運営し、社会保険労務士などの資格を持つ人に研修を実施。16年度は全国で75人のプランナーが活動する。支援対象は、例えば小売業の場合、常時雇用する労働者が50人以下の企業。

育児プランナーとして3年間、活動してきた原聡美さんは「小さな会社は社長が人事担当を兼務し、孤軍奮闘している場合も多い。育休復帰後も含めたフォローや、事例の紹介が喜ばれる」と、専門家による支援の意義を強調する。

昨年、原さんが支援したA社(建設コンサルティング事業、従業員数72人)の依頼は、専門性の高い従業員の育休支援だった。代替要員の確保が難しく、今後も育休希望者が続くと見込まれていた。

そこで、原さんはA社から業務内容を丁寧に聞いた上で、育休取得や復帰に必要な対応だけでなく、業務のマニュアル化や人材育成のあり方についても提案し、育休復帰支援プランへの反映を指南。対象者はスムーズに産休・育休に入ることができ、会社側からも「ほかの部署でも展開していきたい」と好評の声が聞かれたという。

労使双方の希望に応えていくことで、「誰もが働きやすい職場づくり、業務改善にも結び付いている」と原さんは語る。

事業を運営するパソナの担当者は「支援は男性や有期契約労働者の育休も対象で、ニーズは高まっている」と話し、16年度は3000社の支援をめざすと意気込む。申し込みは、パソナの専用サイトから。

育休復帰支援プランを策定し、育休対象者が育休を取得して復帰した場合、厚労省の「中小企業両立支援助成金・育休復帰支援プランコース」の助成も受けられる(年間1企業につき2人まで最大120万円)。


柔軟な働き方の実現へ

社会での女性の活躍や男性の育児参加を進めるためにも、多様で柔軟な働き方の実現に取り組む企業を広げていくことが課題だ。

就業規則に育休制度の規定がある事業所の割合は、規模が小さくなるほど減り、従業員数500人以上が100%であるのに比べ、同5~29人は30ポイント以上も低い現状がある。「休暇が取りにくい」「人員に余裕がない」といって両立支援に二の足を踏む中小企業は少なくないようだ。

雇用環境に関する指導に当たる東京労働局の指導官は、こうした実態を踏まえて、「中小企業は特にきめ細かい支援が必要だと感じる」と話し、来年1月の改正育児・介護休業法の施行に向け、10月からセミナーや個別相談会を実施していく。

中小企業向けに育児プランナーのような専門家派遣を行う自治体も広がっているが、活用する企業は少ない。「従業員の育休取得で奨励金」といった促進策だけでは改善に結び付きにくいケースもある。こうした企業ごとの課題に対応する支援も、根気強く続けていく必要がある。


有期契約労働者も取得しやすく


来年1月から 育児・介護休業法

仕事と育児・介護の両立支援を進めるため、改正育児・介護休業法が来年1月に施行される。育児に関する主な改正内容は、育児休業の申し出ができる有期契約労働者の取得要件が緩和されるほか、子どものための看護休暇も半日単位での取得が可能になる。

同法についてはこれまでも、短時間勤務制度の義務化や、パート・派遣労働などへの対象拡大といった見直しを、公明党が一貫してリードしてきた。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ