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  • 2016.08.29
  • 情勢/解説
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公明新聞:2016年8月29日(月)付



視覚障がいの男性が駅ホームから転落し、電車にひかれた事故を受け、設置を求める声が高まるホームドアと、政府が検討を進める成人年齢を引き下げる民法改正について解説する。


駅のホームドア


視覚障がい者の転落・死亡事故を受け、国交省検討会が設置前倒しの議論開始。20年五輪に向け主要駅での整備急ぐ。


Q 鉄道駅へのホームドア設置が加速すると聞いたが。


A その通りだ。石井啓一国土交通相(公明党)は24日、東京メトロ・銀座線の青山一丁目駅で起きた視覚障がい者の転落・死亡事故を受け、銀座線のホームドア設置計画の前倒しや駅の安全強化策を検討する方針を表明した。これを受け、鉄道会社などで構成する同省の検討会は26日に初会合を行い、具体策の議論を開始。年内にも中間取りまとめを行う。


Q ホームからの転落事故は、どのぐらい起きているのか。


A 国交省によると、2014年度は視覚障がい者の転落事故が80件で、障がいのない人も含めると3673件起きている。

ホームドアの設置駅数は、今年3月末で665駅となっており、07年3月末の318駅から2倍以上に増えている。ただ、ホームドアの設置には1駅当たり数億から十数億円が必要とされる。また、鉄道各社の相互乗り入れが増えたことで、乗降扉の位置や数が異なる車両への対応が求められることもあり、全国一律で導入するのは難しく、鉄道各社は重要度の高い駅から整備を進めている。

国交省は、1日に10万人以上が使う都心部の駅では特に必要性が高いことから、東京五輪・パラリンピックが開催される20年までに優先的に設置するよう鉄道各社に求めている。20年には、全国約9500駅のうち主要800駅で設置される見通しだ。


Q 公明党の取り組みは。


A 公明党の国土交通部会と障がい者福祉委員会は銀座線の事故後、直ちに現場を調査し、東京メトロと意見を交わした。同社は、大規模改修を予定する渋谷駅と新橋駅を除く銀座線全駅に18年度末までにホームドアを設置すると説明した上で「より早期に着工できるよう努力したい」と述べている。また、高木美智代障がい者福祉委員長(衆院議員)らは「再発防止に向け、ハード面での安全対策に加え、障がい者への声掛けなどソフト面での対応策にも全力を注ぐ」と語っている。

公明党は、これまでも「交通バリアフリー法」(00年)や「新バリアフリー法」(06年)の制定を主導するなど、障がい者や高齢者が移動する際の妨げをなくすバリアフリー化を進めてきた。引き続き、障がい者らが安心して暮らせる環境の整備に全力で取り組んでいく。


成人年齢の引き下げ


20歳から18歳へ、早ければ来年の通常国会にも民法改正案提出の見通し。影響が大きく幅広い議論が必要。


Q 成人年齢が20歳から18歳に引き下げられるのか。


A 政府は現在、そのための民法改正案を、早ければ来年の通常国会にも提出する方向で調整を進めている。きっかけは2007年成立の国民投票法が投票権を18歳以上に与えたことだ。投票権年齢や成人年齢のような重要な規定は、全ての法律でそろえる必要はなくても、ある程度の統一性をもたせることが求められる(国法上の統一)。このため、09年には法相の諮問機関である法制審議会が、成人年齢を「18歳に引き下げるのが適当である」との報告書をまとめている。

成人年齢の引き下げは、その影響の大きさから慎重な議論が重ねられているが、先の参院選で18歳選挙権が実現するなど、制度改革は着実に進められている。


Q
選挙で投票できる年齢以外に、どのような影響が考えられるのか。


A 例えば、現在は20歳以上に認められている飲酒や喫煙、親の同意を得ずに結婚できることなどを、どうするのかが問われる。

親の同意なしでの結婚は成人ならば認められるので、民法が改正されれば18歳から認められることになる。飲酒や喫煙については、民法の改正だけでなく、それぞれ個別に規制している法律の改正が必要になる。飲酒や喫煙が許される年齢の引き下げには反対論も根強く、民法が改正されても、20歳になるまで認められない可能性もある。


Q 悪徳商法による被害も気掛かりだ。


A 民法の定めでは、不当な契約は「未成年」という理由だけで解約できる。このため、悪質な業者は、自己責任が問われる20歳になったばかりの若者を狙う傾向がある。成人年齢を18歳に引き下げる場合には、被害の拡大を防ぐために、若者を守る仕組みを設けるべきだと主張する専門家もいる。

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