e全国初の量産化 竹を家畜用飼料に

  • 2016.08.25
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年8月25日(木)付



牛の肉質向上など効果
放置竹林の解消にも一役
宮崎・都城市



宮崎県都城市にある民間企業で今年3月、竹を主原料とした家畜用発酵粗飼料「笹サイレージ」を製造する量産化設備が完成し、注目を集めている。県畜産試験場が研究を進めてきたもので、量産化は全国初。同事業を推進してきた公明党市議団(音堅良一団長)はこのほど、同民間企業を視察し、関係者から話を聞いた。


県試験場と地元企業が連携し実現

笹サイレージは、伐採した竹を粉砕し、発酵させた粗飼料。地域の未利用資源である笹や幹といった竹全体を活用するのは珍しく、「畜産業界の新たな可能性を秘めた飼料」との呼び声も高い。

竹の有効活用と飼料自給率の向上を図ろうと、県畜産試験場が2011年度から、竹の飼料化をめざす研究を進めてきた。その結果、牛に笹サイレージを与えると、通常のエサで育った牛よりも、肉質やうまみが向上するなどの効果があると判明。和牛関連の企業や農場などと取引があり、竹材調達から製品の供給までの体制が整っている大和検査鉱業株式会社(都城市、田中浩一郎社長)が量産化に踏み切った。県畜産試験場関係者は「竹を飼料にした牛が、新たなブランド化につながるのでは」と期待する。

飼料化の手順は、竹林で竹を伐採し、工場へ運搬。竹を丸ごと機械で細かく砕いて糖蜜と混ぜ合わせ、ロール状に巻いてラップで包む。約40日間、発酵させると完成する。原料となる竹は、竹林被害で困っている所有者からの依頼を受けて伐採するが、伐採や運搬などは原則無償で行われる。同社によると、これまでに10件ほど竹林所有者と交渉し、竹林を伐採、飼料化を進めてきたという。

竹は日本各地に分布し、古くから身近な生活資源として利用されてきた。成長が早く繁殖力も強い貴重な再生可能資源だが、近年、プラスチック素材などの普及により、利用されず、放置される竹林が大きな問題になっている。林野庁によると、県内の竹林面積は5531ヘクタール(2012年3月31日現在)に及ぶ。

竹林は、繁殖力の強さから他の植物の成長を阻害する恐れがあるだけでなく、地下茎が浅い場所で平面的に広がるため、大雨や地震などで地滑りを起こす危険性がある。田中社長は「笹サイレージの量産化が軌道に乗れば、放置竹林という地域の課題解決はもちろん、飼料の国内自給率の低迷への歯止めといった一石二鳥の効果も期待できる。今後も取り組みを加速させていきたい」と意気込む。

党市議団はこれまで、大浦覚議員が08年9月議会で地域資源の有効活用の重要性を訴えるなど、取り組みを後押ししてきた。視察を終えた後、音堅団長は「"竹害"とされた地域資源を飼料として有効活用することで、わが市だけでなく県全体の畜産振興にもつながる。今後も、笹サイレージの知名度の向上を図るなど応援していきたい」と語っていた。

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