e成人年齢引き下げ 18、19歳守る施策の議論も必要

  • 2016.08.22
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年8月22日(月)付



成人年齢を今の20歳から18歳にするメリットと問題点は何か―政府が成人年齢引き下げの民法改正に向けた調整に入った。「大人」のあり方について国民も身近な問題として考える必要がある。

今の18、19歳の若年者をそのまま「大人」扱いすることについては議論がある。

成人年齢を「18歳に引き下げるのが適当である」との結論を示した法制審議会(法相の諮問機関)の報告書(2009年)でも、「若年者の自立を促すような施策や消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策が実現されることが必要である」と求めている。

政府は改正準備の中で、若年者を守る施策についても議論を深めてほしい。

成人年齢引き下げ論議の発端は、07年成立の国民投票法が投票権を18歳以上に与えたことだった。同法の付則によって、民法の成人年齢についても「検討を加え、必要な法制上の措置を講じる」ことが定められた。

確かに、法律ごとに成人年齢が違うと分かりづらい。しかし、法律にはそれぞれの立法目的があり、誰を「大人」と扱うかは個別的に判断すべきで一律に決めると若年者を守れなくなる、との主張も説得力がある。

民法の場合、「大人」とは、消費者として自己責任で契約をし、また、父母の親権による保護から離れることだ。現在は、20歳未満ならば一時の誤った判断で契約をしても取り消すことができるし、親の下で生活も守られる。

悪徳商法被害などに関する消費者センターへの相談件数は、18、19歳と比べ、20歳は急増している。悪徳業者は20歳になったばかりの「大人」を狙う。自己責任を逆手に取るためだ。専門家は18歳成人で被害の拡大が懸念されるため、若年者を守る施策の必要性を強調する。

先の報告書は「18歳以上の者を、政治面のみならず、経済活動の場面においても一人前の『大人』として処遇することは、若年者が将来の国づくりの中心であるという国としての強い決意を示すことにつながる」とメリットを述べる。しかし、若年者を守る施策が整わないと国民の理解と支持は得られない。

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