e障がい者施設殺傷事件 残虐非道な犯行。まず動機解明を

  • 2016.07.29
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年7月29日(金)付



あまりにも残虐非道であり、怒りと悲しみで言葉を失った。

26日に相模原市緑区の障がい者施設「津久井やまゆり園」が襲撃され、入所者19人が死亡、26人が重軽傷を負った。「職員体制の薄い時間帯を突き、抵抗できない知的障害のある人を狙った計画的かつ凶悪残忍な犯行であり、到底許すことはできません」―。知的障がいのある当事者と家族でつくる「全国手をつなぐ育成会連合会」は同日夜、会のホームページで、このような声明を公表した。全く同じ思いである。事件の異常性・重大性を深く受け止め、犠牲者とそのご家族に心から哀悼の意を表したい。

19人もの死亡は、刃物を使った殺人事件では戦後最悪という。テレビ報道などを通じて全国に衝撃を広げている。

事件の捜査が進むにつれて、その実態が少しずつ明らかになりつつある。まずは、事実関係の確認を急がなければならない。とりわけ、逮捕された元職員がどのような動機で凶行に至ったのか、早期の解明が求められよう。

元職員は今年2月から、入所者の殺害をほのめかす言動を繰り返し、園側は元職員に退職願を提出してもらった。市も本人や家族の同意が必要ない緊急措置入院をさせることに踏み切り、精神障がいの診断を受けた元職員は、10日間程度の入院生活を送った後、退院が認められたという。

警察は、事件が起きる前から園周辺のパトロールを強化しており、園側も元職員の退院を警察に連絡、防犯カメラ16台を新設し警戒を強めていた。それでも事件が防げなかったことが本当に残念でならない。措置入院制度や退院後の支援体制について、一層の検証が必要となろう。

襲われた障がい者施設と同様の施設は全国各地に存在する。"地域に開かれた施設"という理想と防犯体制の強化との兼ね合いは難しいが、警備のあり方や警察との連携についても検討を重ね、防犯対策に万全を期してもらいたい。

また今回の事件によって、精神障がい者への差別や偏見が広がることは、絶対にあってはならない。めざすべきは、障がいの有無にかかわらず、誰もが互いに個性を尊重し合う「共生社会」である。

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