eコラム「北斗七星」

  • 2016.07.25
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年7月25日(月)付



リオ五輪近しで盛り上がる中、日本で一冊の本が出版された。米国の陸上選手ジェシー・オーエンスの人生を描いた「走ることは、生きること」(晃洋書房刊)。貧しいアフリカ系アメリカ人の家庭に生まれたジェシーは幼少期病弱で、一家の足手まといになっていると自分を卑下していたが、走ることに目覚めた日から、生きる喜びに輝いていく◆彼の晴れ舞台は1936年のベルリン五輪。同五輪はヒトラーが「自らが考える人類の中の優秀な民族『アーリア人』の見本市にしたかった」(同書)大会。それを粉砕したのが、ヒトラーが劣悪人種と蔑んだ黒人のジェシーだった◆ジェシーは陸上の華100メートル走をはじめ、4つの金メダルを、すべて五輪新記録で獲得した◆中でも特筆すべきは走り幅跳び。世界記録保持者のジェシーにとって予選通過は楽々と思いきや、2回ファールしてチャンスは残り1回となった。このとき、ドイツのロング選手が踏み切り板から1フィート(30.48センチ)手前に線を引き、そこからジャンプするようアドバイス。そのお陰で予選を突破、決勝では1位ジェシー、2位ロングとなった◆ジェシーは「メダルは腐食するが、友情は色あせることはない」と競技場で結ばれた親愛を生涯の誇りにした。リオでも友情の輪が幾重にも広がることを期待したい。(爽)

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