e熊本地震 進み始めた生活再建への道

  • 2016.06.14
  • 情勢/社会
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公明新聞:2016年6月14日(火)付



「住まい」取り巻く現状と課題
応急仮設への入居始まる



熊本地震の発生から2カ月。いまだ余震が続く中、未曽有の被害で住まいを失った被災者は、応急仮設住宅などの提供によって少しずつ生活再建へと歩み始めている。一方で住居環境に関する課題も少なくない。被災地の現状と課題を追った。=熊本地震取材班

安堵と不安...被災者の思い複雑

「ようやく人目を気にせず眠ることができます。今も苦しい避難所生活を続ける他の被災者のことを思うと心からは喜べない」。今月1日から「みなし仮設住宅」の賃貸マンション(熊本市中央区)で新生活を始めた松田民子さん(83)は遠慮がちに語る。

4月16日の本震で同市西区の松田さんの自宅は壁が崩れ落ち、玄関先には大きな亀裂が入った。「4年前に購入した念願のマイホームだったのに。今は半壊で住める状態にない......」と、落胆の色を隠せない。

熊本県健康福祉政策課によると、全壊や半壊などで住めなくなった住宅は合計3万8戸(12日現在)にも上るという。こうした被災者に対して県と熊本市は、民間の賃貸住宅を「みなし仮設住宅」として原則月額6万円まで家賃を補助している。

同住宅の制度を知った松田さんは5月初旬、市内の不動産を駆け回り、無事に入居手続きを終えた。

約1カ月間の避難所生活を強いられてきた松田さんの表情には今も疲労が色濃く残る。「一日も早く被災者の住まい環境を整えてほしい。そこからやっと私たちの生活再建が始まるのだから」と、被災者が抱く切なる願いを代弁する。

一方、震度7を2回記録した益城町や甚大な被害に見舞われた南阿蘇村など16市町村では、合計2951戸の応急仮設住宅の建設が急ピッチで進められている。

小雨が降った5日には、いち早く甲佐町で仮設住宅(90戸)への入居がスタート。午前9時ごろから家電製品や段ボールを積んだ軽トラックや、両手に荷物を持った被災者たちが、せわしなく仮設住宅の並ぶ敷地内を行き来していた。

自宅が全壊したと話す山本智明さん(63)は、「今は住まいを確保できた安堵感と将来への不安が入り交じった気持ち。いつ、こうした避難生活から抜け出せるのだろうか」と、真新しい玄関をじっと見つめながら言葉を紡いだ。

仮設住宅であっても新たな生活を始めた被災者の姿は、少しずつではあるが生活再建への兆しを感じさせる。きょう14日、益城町でも88戸への入居が始まる。今後も行政には居住環境の整備・確保に向けた、きめ細かな対応が急がれる。

「もうここで暮らせない」

住民悩ます液状化や集団移転

住まいに関する被災自治体の課題は多岐にわたり、生活再建を願う被災者の大きな足かせとなっている。

地震に伴う液状化現象で地盤が緩んだ熊本市南区では、至る所で家屋や電柱が数十センチほど地面に沈み、異様な光景が広がる。同区近見で傾いた自宅に住む峰玲子さん(83)は、「土地の沈下で家の修理もできない。ここに住み続けられるか不安......」と窮状を語った。

こうした液状化の被害を理由に、同区内から転出する住民が相次いでいる。日吉校区自治会連合会の荒木優会長は「このままでは市街地なのに過疎化してしまう」と危機感を強める。

一方、阿蘇地域で壊滅的な被害が出た西原村では、「安全面を考えれば将来的に同じ場所で暮らすことはできない」と、住民の多くが複雑な感情を抱く。

住民の要望を受け同村は1日、集団移転などに関する意見交換会を開催。同村震災復興推進室によると、「倒壊した家屋の再建は難しい」「住み慣れた土地を離れることに賛成できない」などの声が上がったという。参加者の一人で大切畑地区に住む坂本隆博さん(73)は、「これからどうするか、ほかの住民の意見も聞いて考えたい」と、苦悶の表情を浮かべた。

益城町では、住宅被害の程度を示す罹災証明書の調査判定を巡り、被災者の不満が高まっている。判定結果によって受けられる公的支援の内容が大きく異なるからだ。

例えば、複数人世帯の場合、「全壊」は最大300万円、「大規模半壊」は同250万円の被災者生活再建支援金が支払われるが、「半壊」や「一部損壊」では原則支給されない。

同町税務課によると、住宅の外観目視のみの1次調査を受けた9807人のうち、2629人が家屋の中まで調査する2次調査を希望しているという(12日現在)。半壊判定を受け再調査を希望する同町安永地区の森國子さん(66)は「家の修理費用は決して安くない。支給額の違いは被災者にとって死活問題になる」と語気を強める。

経済的理由などから、修理できない自宅で生活を続ける被災者も後を絶たない。安心して暮らせる住まいの確保へ、行政の手厚い支援が求められている。

人の痛み分かる公明に感謝

熊本・阿蘇市 佐藤義興市長

発災当初は全職員が自発的に登庁し、消防団や地域の方々と協力して、被害確認や市民の安全確保などに無我夢中で対応しました。4年前の豪雨災害の教訓が生きたように思います。

震災から2カ月がたった今、国道57号の寸断や農地の亀裂などで基幹産業である観光業、農業が大打撃を受けています。仮設住宅の建設や公共インフラの早期復旧など、未来志向で再建に取り組んでいく決意ですが、被害が大きすぎて自主財源では対応できません。さらに梅雨時期の土砂災害への対策も必要です。国には被災自治体の負担を減らす支援を期待しています。

公明党の国会議員や県議の皆さんには、発災直後から地元市議と共に何度も足を運んでいただき、われわれの声を国に届けてくれたことに心から感謝しています。今後も人の痛みが分かる公明党に被災地支援へのお力添えをお願いしたい。

熊本地震における公明党の主な実績

4月14日の発災翌日から公明党は被災地へ飛び込み被害調査を行うとともに、被災自治体や住民から寄せられた切実な声をネットワークの力で素早く国に届けてきた。被災地の要望が反映された2016年度補正予算をはじめ、公明党の主な実績を紹介する。

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