eコラム「北斗七星」

  • 2016.05.10
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年5月10日(火)付



連休中、愛知県に住む伯母と久しぶりに会った。若い頃、神奈川県鎌倉市にあった松竹大船撮影所で、原節子や佐田啓二のサインをもらったという。ぜひ見たいと思ったが現物は行方不明。何としても探し出してほしいと祈りつつ帰京した◆伯母が2人のスターに会ったのは、映画監督の小津安二郎が撮影中の時だったようだ。「日常生活を撮っただけの映画なのにね」と小津作品の不思議な魅力を懐かしむ伯母の言葉に、言い得て妙だと思った。確かに庶民の喜怒哀楽をテーマにした作品が多い◆しかも静謐な画面を通して丹念に描くため、時に退屈な印象を与えかねないが、そこに込められた人間への温かなまなざしが心に深く染み入ってくる。「無気力な映画」と批判したフランスの映画監督のフランソワ・トリュフォーが、後に小津作品のとりこになったという逸話もある◆「永遠に通じるものこそ常に新しい」とは小津の有名な言葉だ。社会の変化におもねることなく信念を貫いた作品の数々は、没後50年以上を経た現在も、国内外の映画関係者や映画ファンを魅了し続けている◆公明党には「大衆とともに」との不動の立党の原点がある。野党時代も政権与党になっても、その力量を存分に発揮してきたのは、変わらぬものがあるからだ。そこに公明党の真価がある。(幸)

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