eコラム「北斗七星」

  • 2016.04.25
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年4月25日(月)付



週末に関西を訪れた帰りに、時間の都合で久しぶりに夜行列車に乗った。香川県の高松と島根県の出雲市から東京へ向かう「サンライズ瀬戸・出雲」号。「ブルートレイン」が次々と姿を消した中で、今も毎日運転されている唯一の寝台特急だ◆この列車が途中の大阪駅に着くのは、日付が変わった0時半すぎ。目的地で時間を目いっぱい有効に使ったというのか、夜中にもかかわらず、ホームに列車を待つ人の姿が目立った◆夜行列車には独特の旅情がある。昔から多くの文学作品にも登場してきた。「雨に濡れし夜汽車の窓に 映りたる 山間の町のともしびの色」(石川啄木)―。闇の中、車窓を走馬灯のように流れる明かりを眺めていたら、誰もが詩人になれるような気がしてくる◆かつての煤けた汽車から、モダンな寝台電車に姿を変えた今も、夜行列車を愛する人は多い。そんな声を受けてJR東日本は、3月の北海道新幹線開業に伴って運転を終了した上野―札幌間の「カシオペア」号を、観光列車として6月から復活させると発表した。3年前から九州で運行を始めた観光寝台列車も高い人気を誇り、外国人旅行者の利用も多いという◆そんな豪華列車でなくていい。若者が「青春18きっぷ」で手軽に乗れるような夜行列車が、各地に復活しないものだろうか。(千)

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