e善意の献血 若者の参加増やせ

  • 2016.02.24
  • 情勢/社会
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公明新聞:2016年2月24日(水)付



20代の提供者が激減
需要増で血液不足の不安も



病気やけがで不足した血液や血液成分を補う輸血は、そのほとんどが献血によって賄われている。輸血を必要とすることが多い高齢者の人口が増加する中、課題となっているのが、若い世代の献血者の減少だ。善意に支えられている献血事業の現状を追った。

若者が集まる街、東京・秋葉原。JRの改札口から徒歩1分のところに、日本赤十字社の献血ルーム「akiba:F」はあった。

同ルームは、近未来をイメージしたデザイン。中央には展示スペースが設けられ、この時は、コスプレ衣装が飾られていた。雑誌やマンガも豊富に並ぶ。献血ルームとはいえ、"オタクの聖地"と呼ばれる秋葉原らしい凝りようだ。

その狙い通りか、平日昼間ではあったが、献血の順番待ちは若い世代が中心だった。30代男性は「血液を必要とする人の助けになれば」と、休暇を利用し大田区から足を運んだ。

同ルームには平均で平日84人、休日155人(2014年度)が訪れているが、09年のオープン当初に比べて献血者数は減少傾向にあり、都内全体でも確保が年々難しくなっているという。

献血は現在、400ミリリットル献血と、血小板や血漿といった特定の成分だけを採る成分献血が中心。採血された血液は、日赤の血液センターでの検査を経て血液製剤となり、医療機関に届けられている。

国内で輸血を必要とする人は年間約95万人といわれ、献血で集められた血液の80%以上は、がんや血液疾患などの病気と闘う人のために使われる。血液製剤の有効期間は短く、赤血球は採血後21日間、血小板は4日間しかない。こうした理由から、年間を通して献血が求められている。

日赤によると、200から400ミリリットル献血を推進したことなどによって必要量が確保されてきたため、献血者は減っているが【グラフ参照】、これまでは血液の供給に支障が出たことはないという。

その一方で、かつて献血を支えていた20代献血者は、この20年間に大きく減少した。

日赤の瀧川正弘・献血推進課長は、人口動態の変化が大きな要因だと説明。高校生に加え、小中学生にもセミナーなどを通して啓発に力を入れてきたものの、「特に20代の減少に歯止めがかからない」と危機感を抱く。


中期目標掲げ推進 厚労省


今後も高齢者人口は増え続けることから、若者の献血離れが進めば、27年には約85万人の献血者が不足すると日赤は推計する。

日赤の瀧川課長は、輸血の適正使用や医療技術の進歩によって、「特別な要因がなければ、大きく需給が変動することは考えにくい」と付け加えるが、「今後の献血基盤を支える10代から30代に献血の行動をつないでいけるかが課題。推計された最悪のシミュレーション通りに27年を迎えるわけにはいかない」と話す。

血液内科と輸血学を専門とする浜松医科大学付属病院の竹下明裕・輸血細胞治療部長も、「高齢者はがんになる確率が高く、今後、必要となる血液がさらに増えると予想される。輸血は医療になくてはならない治療法であり、若年者からの献血を増加させることが重要だ」と指摘する。

こうした状況を踏まえ、厚生労働省は、献血可能な20代の若者に占める献血者の割合を14年度の6.7%から8.1%に引き上げるなど、20年に向けた中期計画「献血推進2020」【表参照】を掲げ、若年層対策を強化。同省血液対策課の清水正順課長補佐は「若い人には献血を理解して一度でも協力してもらいたい」と呼び掛ける。


ボランティアが力。公明党員も貢献


"善意のボランティア"である献血。その献血を呼び掛ける協力者が大きな推進力となっている。

全国6000人を超える「学生献血推進ボランティア」もその一つ。東京理科大学の篠原知樹さんは、月2回ほど、都内各所で献血の呼び掛けを手伝う。現在は、関東甲信越ブロック学生献血推進実行委員長としても活動中で、最近は動画『やってみよう献血!』を作成し、投稿サイトにアップした。「若い人の中には、自分は献血できる年齢に達していないといった誤解も多いと感じる。多くの人に見てほしい」とPR。

一方、地域活動の一環で献血を行う公明党員も。大阪府高槻市の党員らでつくる「高槻公友会・献血友の会」は1988年から毎年、集団献血を実施。参加人数は延べ1万6000人を突破した。活動を支えてきた藤田頼夫さんは「真心を積み重ねることで、尊い命を救える」と熱っぽく語る。同会は、3月21日、40回目となる集団献血を高槻市役所で行う予定だ。

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