e地方創生 人材づくり進む

  • 2016.01.18
  • 情勢/社会
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公明新聞:2016年1月18日(月)付



地方創生の担い手となる人材育成を進めるための取り組みが活発になっている。政府が2016年度から開始する資格制度や、大学などが行っている事業をまとめた。



政府が新制度を創設へ

地域活性化で情報活用促す

政府は、地方創生に向けた自治体のさまざまな取り組みを情報面から支援する「地域経済分析システム(RESAS=リーサス)」を活用できる人に資格を付与する新しい制度を16年度に創設する。

リーサスは、政府が全国の地域の産業や観光、人口などに関する大量のデータをまとめ、インターネット上で公開しているものだ。各自治体が、地方創生を推進するための政策立案において具体的な数値目標を設定したり、政策が実際に効果を上げているかどうかを検証する際に、活用できるようにしている。

しかし、地域の企業の業績や人口動向などを分析し、それを政策の立案などにつなげるには高度な専門知識が必要で、そうした知識を持つ人材が不足している自治体も多い。リーサスの活用がスムーズに進んでいないのが実情である。

そのため政府は、まず、リーサスの活用方法をインターネット上で学べるeラーニングシステムを16年度の早い段階で立ち上げる。ネット上で実施される試験に合格すれば、東京都内で行われるリーサスを使った地域産業の分析や地域経済の活性化策などを立案するための試験を受けることが可能になる。受験者の成績に応じて「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」の資格を地方創生相が認定する制度を創設する。

政府は特に、自治体職員や経営コンサルタント、中小企業診断士、地域の金融機関の職員などが新たな資格を取得し、学んだ知識を生かすことができるようになれば、リーサスの統計データに基づいた政策の実施や、地域の産業育成などの取り組みが進むようになると期待している。


大学が先駆的事業で育成

<  京 都 府  >

現実的な課題解決能力を養う

大学が、自治体や企業などと協力して進めている人材育成事業もある。

特に、京都府内の9大学(京都大学、京都産業大学、同志社大学、龍谷大学など)が自治体や京都商工会議所などと連携して行っている地域資格制度「地域公共政策士」【図参照】は、日本で初となる先駆的な地方創生を担う人材育成の取り組みとして注目されている。

同制度は、京都府内の大学を卒業した若者が、京都で就職せず、大阪府など関西地方の他府県や関東圏に流出する傾向が強く、特に25~29歳の若年層の人口流出が深刻なため、京都府内の地域の活性化に貢献できる人材を育成し、若者人口を定着させるために創設された。11年から運用されている。

地域公共政策士になるには、大学学部レベルのプログラムと大学院修士レベルのプログラムの双方を履修する必要があり、資格取得者の数は限られていた。

15年6月に、地方創生に向けた動きを加速させるため制度を更新。大学学部レベルのプログラムを履修するだけで取得できる「初級地域公共政策士」の資格を新たに設けた。

これにより、制度を支える京都府内9大学の在学生全体の1割に当たる約1000人の資格取得者を毎年誕生させるという。

地域公共政策士の資格取得で、特に重視されているのが「キャップストーンプログラム(CS)」である。CSは1990年代に米国の大学で導入された実践的な教育プログラムで、大学で学んだ知識を応用し、社会の現実的な問題解決をめざす。

地域公共政策士の資格取得をめざす学生はチームを組み、実際に地域の課題解決に向けた活動を行う。歩道のバリアフリー化や、撤去される公共施設の跡地利用といった地域が抱えている問題を調査し、最終的に自治体に政策提案を行う。

資格の付与は、地域公共政策士の資格制度を運用する大学や自治体などが創設した地域の民間認証機関である一般財団法人「地域公共人材開発機構」が実施する。

このほか、政府は、大学生が地方創生に関心が持てるような教材づくりも進めている。

金沢大学では16年度からリーサスに関する授業が1年生の選択必須科目となるほか、慶応義塾大学もゼミで政府の教材を活用する予定である。

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