eコラム「北斗七星」

  • 2015.12.24
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年12月23日(水)付



いまから250年ほど前、江戸時代の話。藩からの理不尽な人馬の徴用で貧窮し、町民の流出にあえぐ宿場町の篤志家たちが、藩に金を貸し付けて得た利子を住民に配り、町を衰亡の危機から救う。人口も幕末まで減ることはなかった◆その舞台は吉岡宿、現在の宮城県大和町。造り酒屋の穀田屋十三郎と茶師の菅原屋篤平治ら9人が、生活を切り詰めて小銭を貯え、家財を売り払い、借金をしてまで資金となる1000両をそろえた◆利子は毎年100両、藩が廃されるまで支払われる一方、9人は自らを利することも誇ることもなく正直に暮らした。●(てん)末は「国恩記」に記録されている。穀田屋は、いまも地道に、造り酒屋を営む◆史実は、『無私の日本人』(磯田道史 文藝春秋)の『穀田屋十三郎』に収められ、『殿、利息でござる!』の題で映画となり明年公開される。磯田氏が吉岡宿を知ったのは面識のない一読者の手紙から。文庫版のあとがきには「その文面は、ほんとうに実のこもったもので、わたしは心を打たれた。三橋さんのいう吉岡の九人のことを調べずにはいられなくなり......」とある。なお、この三橋さんとは、公明党の元大和町議・三橋正穎氏のことである◆真心が伝わりますようにと念じながら、いまだ年賀状の添え書きに追われる。きょうは「ふみの日」。(川)

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