e極右勢力台頭の欧州 大衆迎合的な政治風潮を懸念

  • 2015.12.10
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年12月10日(木)付



世界を震撼させたテロの影響を避けられなかった。


フランスの地域圏議会選挙の第1回投票で、反移民や反難民政策を掲げる極右政党の国民戦線(FN)が躍進した。パリ同時多発テロ後、有権者の抱く不安を巧みに吸い上げて得票を伸ばした同党の党首ルペン氏は、2017年5月の次期大統領選の有力候補になることが目標と公言しており、大きな足がかりを得たと見られている。


難民の排斥など極端な主張を掲げる政党は、フランス以外でも支持を伸ばしている。


スイスでは10月の国民議会選挙で右派国民党が大勝、ポーランドでも同月に行われた総選挙で保守政党「法と正義」が圧勝、11月に政権が発足したばかりだ。


オランダでは極右の自由党が伸張し、FNなどと欧州議会で極右新会派「欧州の国民と自由」を6月に結成。今秋以降、自由党の支持率は世論調査でトップに立っている。


極右勢力は、自国の歴史や文化の優位性をことさらに強調する主義・主張を掲げ、存在感をアピールする。異なる民族や宗教との共存を進める「多文化主義」を認めないため、差別的な言説も目立つ。


パリのテロ事件の実行犯のように、移民2世、3世の間で過激思想に感化される若者が多いのは、同じ国民でありながら、教育や雇用をはじめさまざまな分野で格差や偏見に苦しみ、社会への不満や疎外感を強めていることが背景にあるからだろう。


極右政党の台頭で国内に排外的な風潮が強まると、こうした移民たちの反発や反感をさらに招き、過激な行動に走らせかねない。そうなれば、過激派組織「イスラム国」(IS)などを喜ばせるだけだ。


民主政治とは、多様な民意を受け止め、中長期的な視点から合意点を探る作業である。情念に訴え、既存の制度や仕組みを単純に否定する手法は民主主義とは程遠い。

 

来年、大統領選が行われる米国でも、「移民を強制送還する」などと叫ぶ候補者の人気が一向に衰えない。主要国の政治が内向きになり、大衆に迎合するポピュリズム、独善的なナショナリズムが高まっていかないだろうか。


国民の賢明な判断と監視が、ますます求められる。

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