e薬物依存者の支援 再犯防止へ地域との連携強化を

  • 2015.11.30
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年11月30日(月)付



刑務所を出た薬物依存者の再犯防止策が動き出す。


法務省はこのほど、刑務所の出所後も覚せい剤など薬物依存からの回復を継続的に支援するため、地域との連携強化を内容としたガイドライン(指針)を策定し、各都道府県や民間の支援団体に配布した。


日本は先進国の中では薬物乱用経験率が非常に低い一方で、薬物依存からの回復や社会復帰の支援体制は大きく遅れている。政府は、このガイドラインに沿った取り組みで薬物依存者支援の実績を確実に積み上げてほしい。


薬物依存症は「否認の病」とも呼ばれ、依存者自らが自覚して治療や支援を求めることはまれである。


薬物乱用の犯罪者になり、刑務所で「薬物依存離脱指導」を受けることで初めて回復に向けた取り組みがはじまり、出所後は保護観察所で引き続き「薬物処遇プログラム」を受ける。しかし、保護観察の期間が終わると、そうした支援から離れてしまうケースが多く、「このことが長期的に見たときの再犯率の高さに少なからず影響を与えているものと考えられる」と、法務省の薬物地域支援研究会は昨年の提言で指摘した。


覚せい剤など薬物乱用で検挙された3人に2人は、薬物再犯者となる。他の犯罪の再犯率に比べて非常に高い。再犯防止には、出所した薬物依存者が地域の医療・保健・福祉機関や回復支援施設などで継続的な治療や支援を受ける必要がある。


今回のガイドラインは、これまで以上に地域と民間支援団体との緊密な連携を構築することの重要性を示した。


例えば、依存の程度、心身の状況、生活歴、出所後の本人の意向など刑務所で実施した薬物依存者に関する調査結果を、地域で支援に携わる施設などに提供し、本人が適切な生活計画を立てるための指導に役立てるよう求めた。


さらにガイドラインは、地域の中で回復を支援するために欠かせない視点も示している。すなわち、薬物依存者を犯罪者という先入観で見るのではなく、「精神症状に苦しむ一人の地域生活者」と見るよう求めている。


この認識は地域社会全体に広げる必要がある。

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