eコラム「北斗七星」

  • 2015.11.04
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年11月3日(火)付



関西出身の作家・中島らもは、よほど型破りの人物だったのだろう。ある新聞社の紙上相談を担当していた時のこと。読者が焼いたジャガイモにみそを付けて食べると死ぬかどうか尋ねてきた◆読者によれば、祖母は「(死ぬのは)ほんまやぞ」と言い張っていたらしい。中島の応答が振るっている。「知人のおじいさんも、九十八歳で亡くなるいまわのきわに、『十六のときに食いさえせなんだら死なずにすんだものを』と絶叫しながらみまかったということです」と◆中島は"正しく恐れる"ことの大切さを伝えたかったに違いない。当然、亡くなるはずなどないのだから、新聞社に問い合わせの電話やハガキが殺到したのは言うまでもない。『中島らもエッセイ・コレクション』(ちくま文庫)で明かしている◆それにしても近年、正しく恐れなければならない事態が頻発している。ウイルスの脅威だ。最近も耳慣れぬ用語を聞いた。「エンテロウイルスD68」。国内患者63人から検出。発熱や咳のほか、まひ症状が出たケースもあるという。米国では1153人が感染している◆昨年、日本ではデング熱が69年ぶりに国内感染した。米国は感染症対策を「国家安全保障の課題」と捉え計画を練り、途上国も支援。片や日本は事が起きると大騒ぎする割に、普段は無防備に近い。戦略の転換が急務だ。(田)

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