e文字・活字文化の日 情報を読み解く"道標"の役割

  • 2015.10.27
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年10月27日(火)付



哲学者・三木清は『読書と人生』で記す。「ひとはひとりで読書の楽しみを味わうことができる」。夜長の季節を感じながら、活字の世界に浸っていくのもいいだろう。


きょう27日は「文字・活字文化の日」である。さらに「読書週間」(11月9日まで)の初日にも当たる。活字離れが指摘される中、本や雑誌、新聞など出版物との触れ合いを楽しむきっかけとしたい。


過去1000年間で最も大きな出来事は何か。米国の「ライフ」誌によれば、ドイツ人のグーテンベルクによる活版印刷の発明という。コロンブスの新大陸発見を上回る出来事で、文字は大衆レベルにまで普及し、活版印刷術は情報革命の先駆けとなった。


現代社会では、インターネットによる情報革命が進んでいる。情報が瞬時に共有され、検索も容易になった。その分、活字文化はネットに圧倒されているかのように映る。


速報性では劣るが、活字は多人数が関わる編集作業を通じ、正確で内容を"発酵"させた情報を読者に提供している。これは断片情報が多いネットにはない特長だろう。


しかもネットの情報源として新聞などの活字媒体が利用されている場合が多い。最近のマスコミ調査では、情報を知る媒体として新聞がネットやテレビより利用されていることが明らかになった。活字の役割は、いやまして高まっているといえよう。


出版界では、各社が提携して絶版状態の良書を復刊する動きがある。また、高齢化に対応して活字を大きくしたり若者向けに装いを新たにしている。再び全集を編む社も増えた。


全国の小中学校・高校で展開する「朝の読書運動」は約2万8000校まで広がっている。この運動を推進している公明党としては感無量である。推進協議会の調べでは、話題本や同世代が主人公の身近なテーマを扱った作品が読まれるようだ。子どもが本を手に取ることが大事であり、そこから読書の世界は広がる。


情報社会では情報を読み解く"道標"が必要だ。活字世界は思索に不可欠な媒体であり、よりよく生きるためのヒントが詰まっているはずだ。活字文化の振興に、社会全体で取り組んでいきたい。

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