e傾斜マンション 居住者の信頼裏切る背信行為

  • 2015.10.20
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年10月20日(火)付



居住者の怒りや困惑は察してあまりある。


横浜市のマンションが基礎部分の施工不良で傾いた上、データが偽装されていた問題は、次々と衝撃的な疑問が出ている。事業者は事態の真相や原因の所在を調べ、解決に向けた取り組みを進めていかなければならない。


横浜市の物件では約1年前から渡り廊下の結合部分のずれが指摘されていたが、事業者は放置してきたという。現場でのずさんな管理が杭の施工不良につながったという見方に加え、杭の補強に使うセメント量の偽装が明らかになるなど、疑惑は深まるばかりだ。現在も問題の全容は明らかになっておらず、居住者からは、事業者の誠意を疑う声が一向に収まらない。


また、杭の施工に携わった業者が他の物件でも不正を行っていた可能性があり、この影響は全国に及ぶ恐れがある。このため、全国の建設業者は、不正を行った業者が関わった約3000棟の建物の調査を進める方針だ。まずは安全性の確認を急ぐべきだ。


横浜市の物件に関して、販売元は全棟建て替えを前提に居住者との話し合いを進めるという。ただ「子どもが学校に慣れてきて、今さら引っ越しは難しい」「便利な場所で生涯住み続けるつもりだった」など、住民の意向はさまざまだ。分譲開始から10年近くが経過しており、これまでに築かれた地域コミュニティーを解体させることにもなりかねない問題である。


建設業界は、東京五輪や東日本大震災の復興需要で人手不足が続くほか、資材の高騰もあり、作業現場は厳しい環境に置かれている。このため、品質確保や元請けの管理機能低下を懸念する声が少なくない。実際に横浜市の例に限らず、昨年から施工不良によるマンションの建て直しなどが相次いでいる。


しかしだからといって、手抜き工事や施工ミスが許されるものではない。


首都直下地震や南海トラフ巨大地震などの恐れがあるわが国において、建物の耐震強度の確保は一人でも多くの人の命を守る上で重要だ。建設業界全体が今回の事件を他山の石として規範意識を高め、信頼回復に取り組まなければならない。

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