eコラム「北斗七星」

  • 2015.10.08
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年10月8日(木)付



横断歩道の信号機で時々目にする音響用押しボタンには、青地に白で右手に白杖を持って歩く人の姿をデザインしたマークが付いている。「盲人のための国際シンボルマーク」だ◆1984年10月、サウジアラビアで開かれた世界盲人連合設立総会で制定された。盲人で思い浮かぶ一人の全盲女子大生がいる。『<できること>の見つけ方』(岩波ジュニア新書)の著者・石田由香理さん◆1歳3カ月の時、病気で両目を摘出。「お前さえおらんかったら」。そう母に言われながらも浪人して大学に進学。フィリピン留学などを経て卒業し、イギリスの大学院へ。可能性を次々広げている◆彼女がフィリピンで訪ねた視覚障害児学級の様子が同著にあった。そこには、盲人というだけで「何もできない存在」として扱われ、基本的な教育さえ受けられない子どもたちがいた◆失明者は邪魔者。そんな状況の社会が世界にはある中で、失明を防ぐ薬の開発につながる研究によって大村智・北里大特別栄誉教授がノーベル医学生理学賞に選ばれた◆「途上国では同薬の無償投与で、年間4万例の失明を防いでいるという」(読売新聞)。大村さんに続き梶田隆章・東京大宇宙線研究所長も物理学賞で受賞へ。相次ぐ日本人科学者のノーベル賞。世界貢献の快挙を心から祝福したい。(六)

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