eコラム「北斗七星」

  • 2015.10.05
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年10月5日(月)付



「がんばろう!石巻」。荒涼とした被災地に毅然と立つ、あの看板に、どれほど多くの人が励まされてきたことだろう。東日本大震災から1カ月後、黒澤健一さんが、津波をかぶった材木を使い、友人と5日かけて作り上げた◆黒澤さんは、2005年に(株)黒沢配管工業を起業し、09年には宮城県石巻市門脇町で、念願だった自宅兼店舗を改築した。誠実な仕事ぶりで、不景気の時でも商売は順調だった。あの3.11までは◆築いてきた店も家も、大津波が奪い去った。家族は無事だったが「全人生を否定された絶望感」に打ちのめされた。そんな時、悲しみをこらえ、地域のため懸命に働く友の姿が黒澤さんを奮い立たせた◆「津波なんかに負けていられない」。「ちょっとした勇気を出して」始めたのが看板作りだった。この黒澤さんの一歩は石巻の人たちの希望となり、復興へのシンボルとして輝いている。看板付近には、21年3月完成をめざして、国と県、市の連携で、復興祈念公園が整備される◆今年8月、新公園に看板を、しかるべき形で移設する基本計画が示された。まさに、あの日の記憶をとどめ、追悼と復興への意志を発信する場にふさわしい。被災地は、かさ上げ工事で日に日に、景色が変わるが復興は、いまだ道半ば。「がんばろう!」との誓いを新たにする。(川)

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