e「こうのとり」の成功 見事な壮挙を喜び合いたい

  • 2015.08.27
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年8月27日(木)付



日本人初の宇宙飛行から今年で25年。日本の宇宙技術は、今や世界をリードするまでに成長している。


日本の無人物資補給機「こうのとり」が25日、国際宇宙ステーション(ISS)に接近し、無事ドッキングした。2009年の初打ち上げから5回連続の成功で、技術力の高さを世界に示した。「こうのとり」の壮挙を喜び合いたい。


ISSへの物資輸送は、日本以外に米国の民間2社とロシア宇宙庁が担う。ところが昨年10月以降、両国の輸送は相次いで失敗。米国の補給機で輸送予定だった物資が「こうのとり」に緊急搭載され、重責を見事に果たしたのだ。


「こうのとり」の開発には国内の企業約400社が携わっているが、関連技術が米国企業へ輸出されるなど、その水準は世界でも折り紙付きになりつつある。文部科学省は、「こうのとり」の後継機を開発するため、輸送能力を保ちつつ軽量化やコスト削減をめざし、改良を進める方針だ。


ただ、現在の「こうのとり」は地球に帰還する場合、大気圏で消滅してしまうため、ISSの物資を地球に持ち帰ることはできない。さらに持ち帰り技術が確立されれば、将来的な有人化への道も開けると期待されている。


政府の新宇宙基本計画では、政府や民間関係者で構成する「宇宙システム海外展開タスクフォース(仮称)」を創設し、官民一体で市場開拓に取り組む。世界の宇宙産業市場は年間19兆円規模で、年々拡大傾向にあるという。


宇宙ビジネスは、放送、通信、気象、教育など多岐にわたるが、日本は気象観測や防災システムなどで開発が進んでおり、災害発生時の被災状況の把握や安全性の確保に効果を発揮している。世界の注目を集める今こそ、宇宙産業の振興を強化し、厳しい国際競争で優位に立ちたい。


一方で、課題も少なくない。最大のネックは高額な費用だ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は新型ロケットを開発し、大幅な打ち上げコストの削減に取り組む。早く実用化してもらいたい。


宇宙産業に関わる人材も不足しており、各国と比べると心もとない。政府は、人材の育成支援も強化してほしい。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ