e噴火速報の運用開始 情報伝える通信基盤を早く

  • 2015.08.05
  • 情勢/解説

公明新聞:2015年8月5日(水)付



気象庁は、全国で常時観測している47火山のどこかで噴火が発生した場合、5分以内にどの火山がいつ噴火したのかについて登山者などに伝える「噴火速報」の運用を、4日から開始した。


同速報は、昨年9月に58人が亡くなり、5人が行方不明となっている御嶽山(長野、岐阜両県の境)の噴火災害の反省を踏まえ、導入された。火口が見えない場所にいる登山者に速報が伝わることで、直ちに下山や小屋への避難など、命を守る行動を取れるようになると期待できる。


同速報は、遠望カメラや火山性微動を検知する地震計と、噴火に伴う空気の振動を検知する空振計による観測から噴火を確認した際に発表される。悪天候で噴煙などが遠望カメラで確認できない場合も、地震計と空振計による観測から推定し、「噴火したもよう」として発表する。


気象庁はこれまで、噴火の第一報として「火山観測報」を用いていた。しかしこれは、航空機の運航のための情報として位置付けられており、噴煙の高さなどを調べるため、発表までに10分程度かかっていた。


また、御嶽山の噴火直前に、気象庁は火山性微動を観測していたが、その事実を登山者に端的に伝える手段が当時はなかった。


今回導入された速報を、登山者の安全の確保につなげていかなければならない。


いくつかの課題がある。気象庁は、携帯電話のメールやスマートフォンのアプリ、自治体の防災行政無線などを通じて噴火速報を伝えていくとしているが、ほとんどの火山で防災行政無線の整備が進んでいない上に、携帯電話などの電波が届かない火山も少なくない。このままでは、多くの登山者に速報が伝わらないという事態になりかねない。


総務省消防庁が昨年10月に実施した調査によると、防災行政無線のスピーカーが設置されている火山は16火山にとどまり、携帯電話会社大手3社の全ての電波を山頂の全域で受信できる火山は、北海道の有珠山とアトサヌプリ、箱根山(神奈川、静岡の両県)の3火山だけだったという。


登山者に噴火速報を確実に伝える通信基盤の整備が待ったなしである。

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