eコラム「北斗七星」

  • 2015.06.22
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年6月20日(土)付



5月の「こどもの日」「母の日」から少し離れてある6月の「父の日」。<存在感希薄な父の日なりけり><父の日や何の気遣ひせぬ家族>。以前うなずかされた公明新聞日曜版「川柳」「俳句」欄の作品だ◆そう言われつつ一家を背負っていく父。いつも家庭で威張っている父が、祖母の通夜で弔問に訪れた社長に平伏する姿を見て、「私達に見せないところで、父はこの姿で戦ってきたのだ」と言ったのは向田邦子さんだった(『父の詫び状』文春文庫)◆家父長の威厳と会社での立場を使い分けて生きなければならない現実を感じ取った娘。一方、さまざまな職業に就いても失敗の連続で、家族を貧しさから救い出せないままでいる父を「生きる『原点』」として尊敬し続けたのは、数々の名曲を世に出した作曲家の遠藤実さんだった◆「いつも社会の底辺のような境涯にありながら、どんな職業にでも、おめず、おくせず、かくすことも偽ることもなく、正面切って全身でぶつかっていく父の姿を見せつけられ、いつかそういう根性をも、うえつけられていた」と言う遠藤さん◆『不滅の遠藤実』(藤原書店)でこの話を紹介した同著編者の一人・橋本五郎さんは、遠藤さんもその父も幸せ、と。<悲壮なる父の為にもその日あり>相生垣瓜人。明日は「父の日」。(六)

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