eコラム「北斗七星」

  • 2015.04.21
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年4月21日(火)付



活字を扱う仕事に携わる人にとって、誤字は禁物だ。駆け出しのころ、手塚治虫の名前を「手塚治」と書いて、大目玉を食らったことがある。「本名を書くとはどういうつもりだ」と◆後で分かったことだが、実は、手塚はよく名前を間違えられたらしい。最も多かったのが「手塚治忠」。当時、原稿は手書き。「虫」が「忠」のまま校閲もすり抜けたのだ。所得番付の記事では「手塚泣虫」となっていたこともあったというから、泣くに泣けまい◆ちなみに、俳人・与謝蕪村が「与謝無村」に。作家・吉行淳之介は、「介」の字を「助」と何度も間違えられた。「学校給食に汚職事件」と、原稿を電話で送稿したところ、「学校給食にお食事券」となってしまった新聞記事も。高橋輝次編著の増補版『誤植読本』(ちくま文庫)にある◆統一選の町村議選が告示を迎えた。舌戦中の市議選、東京特別区議選と同様、似た名前や同姓、同名の候補もいるだろう。大切な"一票"である。正しい名前の徹底は基本中の基本だ。電話を活用する際には「汚職事件」が「お食事券」とならぬよう、きちんと頼もう◆宮本武蔵は兵法を極めるには道理を修めるべきとし、9カ条を挙げている。「わづかなる事にも気を付くる事」(『五輪書』岩波文庫)はその一つ。些細なことが勝敗を分ける。肝に銘じて反転攻勢をかけたい。(田)

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ