eコラム「北斗七星」

  • 2015.04.16
  • 情勢/社会

公明新聞:2015年4月16日(木)付



多くの歴史小説を残した故・吉村昭氏は、若手の作家に辛口の言葉を投げかけることがあった。太宰治賞を発表する席上では、選者を代表してスピーチに立ち、「この人は滝に打たれたことが一度もない」と晴れ舞台の主役である受賞者に苦言を呈している◆「滝」とは、編集者との出会いを指す。滝に打たれて作家は伸びる、を信念にしていた人だけに、厳しい意見を浴びせてくる編集者に不満を漏らす新人作家には、「その人こそ本当の編集者。大切にしないとだめだよ」と助言している。著書「縁起のいい客」(文藝春秋)に綴っている◆道府県・政令市議選の投票率は過去最低が相次いだ。地方議員の一連の不祥事や野党第一党の民主党が前回より公認候補を大幅に減らし、有権者の選択肢を奪ったことなどが影響したと指摘されている◆前回の統一地方選では、政治不信の高まりを受けて地方議会の改革が大きなテーマになり、条例の制定をはじめさまざまな試みにつながった。しかし、肝心の地方議員のあり方について、有権者が納得する議論があったか、となると心もとない◆議員は、政策通で行動力も要求されるが、最も重要な資質は地域との密着度だ。厳しい意見や要望を寄せる党員や支持者に恵まれているかどうか。住民と出会いがない人物に地域は任せられない。(明)

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