e自衛隊海外派遣へ3原則

  • 2015.03.23
  • 情勢/国際
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公明新聞:2015年3月21日(土)付




与党安保協が中間取りまとめ

「正当性」「民主的統制」「安全確保」が不可欠

北側一雄副代表に聞く




自民、公明両党による「安全保障法制整備に関する与党協議会」は20日、「安全保障法制整備の具体的な方向性について」と題する文書を取りまとめました。座長代理を務める公明党の北側一雄副代表(衆院議員)に、そのポイントやこれまでの党の取り組みについて聞きました。



グレーゾーン



米軍以外への協力に歯止め



―取りまとめの位置付けは。


北側一雄副代表 昨年7月1日の安全保障法制整備に関する閣議決定に基づき、具体的な法制をつくるため、2月から与党協議を再開しています。


今回の取りまとめは、再開後の協議内容の中間的な性格です。これまでに自民、公明両党の間で共有できた認識取りまとめ骨子を示しました。今後は政府が作成する条文案をもとに、さらに精緻な論議を進めていく必要があります。


―取りまとめの冒頭に、自衛隊の海外派遣について公明党が主張した3原則が「3つの方針」として盛り込まれた。その意義は。


北側 わが国の実力組織である自衛隊を、いくら武力行使の目的ではないといっても海外の活動に参加させる以上、厳格な原則が必要であり、それを法律の中に目的、要件、手続きとして明確に書き込まなければならないと訴えました。


第一が、国際法上の正当性です。国際法に照らし、正当な理由が必要なのは言うまでもありません。


次に挙げたのが、国民の理解を得るという点。そのため、国会の関与を法律で明確にするよう求めました。具体的には国会の承認です。民主的統制の観点からも重要だと考えています。


最後は、自衛隊員の安全確保です。法整備により、自衛隊の活動範囲が広がることが予想されます。これまでも隊員の安全には十分配慮してきていますが、法律の中に仕組みとして盛り込む必要があると指摘しました。これらの3原則については自民党も理解を示しています。


―武力攻撃に至らない侵害(グレーゾーン事態)への対処で、武器等防護の対象を広げるのか。


北側 自衛隊の持つ武器が破壊または奪取されようとする場合、その武器を守らなければ日本を防衛できません。そこで自衛隊法第95条は、武器等防護のために受動的かつ限定的な武器使用を認めています。


一方、日米安全保障条約によって、日本防衛は米軍と協力して行います。そのため、今回、米軍からの要請があり、「我が国の防衛に資する活動に現に従事」している米軍の武器等についても防護を可能にします。


―米軍以外の他国軍隊への武器等防護も書かれているが、協力が無制限に拡大しないか。

北側 「我が国の防衛に資する活動」に現に従事しており、さらに、「『我が国の防衛力を構成する重要な物的手段』に当たり得る場合」という二つの厳格な要件を入れているため、武器等防護の対象となる他国の軍隊が無制限に広がることはありません。



さらに、米軍や他国軍隊の武器等防護の実施を判断する際は、内閣が関与する方針を盛り込みました。



国際平和協力



国連決議、国会承認が前提

人道復興 支援など 参加はPKO同様に厳格化




―周辺事態法は、どのように改正されるのか。


北側 周辺事態とは、例えば日本の近隣で紛争が起こり、紛争当事者が日本に対しても敵意を持っているような場合です。まさに、わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態であり、その事態への対処に当たっている米軍への後方支援を定めたのが周辺事態法です。


今回、同様の事態で米国以外の国が日本に協力するケースも想定されるため、米軍以外の他国軍隊に対する後方支援についても検討します。


―日本の平和と安全に直接関係なくても、国連の決議などにより国際社会の平和と安全のために活動する多国籍軍への後方支援を実施するため、新法(一般法)をつくって対応する方針が示された。その必要性はあるのか。


北側 そうした多国籍軍への協力としては、2001年のテロ対策や03年のイラク復興支援などを実施した経験があります。その時は、その都度、期限や活動内容を限定した特別措置法(特措法)をつくって自衛隊を派遣してきました。


しかしこれに対し、特措法という方法で良いのかという議論が以前からあり、そこから一般法で実施するという考えも出されていました。


一般法について政府は、国連などの派遣要請を受けた場合に速やかに自衛隊の能力にふさわしい役割や地域の調整ができ、自衛隊員の安全を確保しつつ得意分野で貢献できると説明しています。それを受け与党は、一般法の制定を検討するため、法案の骨格を提示するよう政府に求めています。


その際にも公明党は、先の3原則を順守するよう主張。特に、国際法上の正当性については、01年のテロ特措法などと同様、国連決議または関連する国連決議があることを前提にしました。


さらに、国会の事前承認を基本としました。


―国連平和維持活動(PKO)以外の活動にも参加する方針が掲げられた。


北側 50年以上の歴史を持つPKOは、停戦監視などで成果を挙げ、ノーベル平和賞も受賞しています。今回、国連が統括するPKOではないものの、PKOに類似した人道復興支援活動などについても参加を検討します。


現行のPKO協力法には、停戦合意や紛争当事者の派遣同意など、参加5原則があります。この5原則と同様の厳格な基準が必要なのは当然です。また、国連が統括していない活動であるため、国際法上の正当性をどう確保するかも重要であり、それを法律に書き込むよう、政府へ要請しました。



自衛の措置



許容されない"他国防衛"



―日本防衛のための「自衛の措置」が他国防衛にまで拡大されないか。


北側 昨年7月の閣議決定において、これまで、他国防衛を目的とした武力行使はできないとしてきた政府の憲法第9条の解釈との論理的な整合性を確保するという観点のもと、武力の行使の新3要件【別掲】を定めました。


この新3要件は、憲法第9条の下で許される自衛の措置の限界を示した重要な要件です。取りまとめでは、自衛隊法や武力攻撃事態対処法の中に、新3要件を過不足なく書き込むよう政府に求めています。


さらに、閣議決定を受けて昨年の7月14、15日に開かれた国会の集中審議で、安倍晋三首相や内閣法制局長官が新3要件に関する政府の考え方を明らかにしました。これらは、非常に大事な答弁です。


例えば、第1要件の「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」とはどのような事態かとの質問に対し内閣法制局長官は、「国民に、わが国が武力攻撃を受けた場合と同様な、深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況」と答えています。


さらに、新3要件の第2要件に「我が国の存立を全うし、国民を守るために」という文言が入った意義について、首相は「他国の防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使を認めるものではない」と明確に述べています。


これらの答弁内容を過不足なく法律に盛り込む必要があります。


―海外で紛争などに巻き込まれた日本人の救出については。


北側 大前提として、在外邦人の救出が頻繁にあり得るとは考えていません。第一義的には、当事国の治安機関が対処するのが前提だと思います。ただし、中にはその国の政府から日本にも入ってほしいと要請があった場合、在外邦人の安全を含む活動の安全な実施に必要な措置を取った上で、在外邦人の救出をするということもあり得るとしました。


現行の自衛隊法では邦人の輸送に限り認めています。しかし例えば、治安が悪く邦人が集合している場所に行くまでに、妨害を受けるケースが考えられます。その際に妨害を排除し、在外邦人が集まる場所にたどり着いて輸送が行えるよう、必要な武器使用を認めるための法整備を検討します。


ただし、これは従来以上に危険を伴う活動です。現在の法律では外相と防衛相が協議して派遣を判断する枠組みですが、首相がきちんと責任を持つという意味で、首相の承認を得て行う仕組みを整えます。

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