e円安 中小企業、家計への影響最小に

  • 2014.09.22
  • 情勢/経済



公明新聞:2014年9月20日(土)付

円安が急速に進んでいる。

19日の東京外国為替市場の円相場で円安ドル高が進み、一時、2008年9月以来、約6年ぶりの1ドル=109円台をつけた。

急速な円安への流れは、米連邦準備制度理事会(FRB)がこれまで続けてきた金融緩和策からの「出口戦略」を進めてきたことが最大の要因だ。17日には、国債などを買い入れて市場に資金を流し込む量的緩和を10月で終えることを決めたが、政策金利を速いペースで引き上げることによって日本との間で金利差が広がるとの観測が広まった。

さらに、英国からの独立の賛否を問うスコットランドの住民投票を巡ってポンドが買い戻される動きが強まり、円売り・ドル買いの流れに勢いが付いた。市場では、さらに110円台まで円安が進むとの見方も強く、今後も注視が必要だ。

円安の影響で、19日の東京株式市場の日経平均株価は、前日比約250円高の1万6321円17銭と、リーマン・ショック前の水準に回復して終了した。大企業にとっては追い風になるとみられるが、肝心の輸出は振るわない。

財務省の8月の貿易統計によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は9485億円の赤字だった。特に輸出は、前年同月比1.3%減と2カ月ぶりに減少に転じた。大手製造業の生産拠点の海外移転が進んでいるため輸出数量が伸び悩んでおり、円安効果も限定的になるとみられる。

むしろ、この1カ月で一気に6円程度も円安が進んだことで、中小企業や家計への影響が心配だ。原油や天然ガス、食料品などの輸入品価格が上昇するからだ。東京商工会議所が行った調査でも、仕入れや原材料・部品、燃料の価格上昇によって、円安によるメリットよりデメリットの方が大きいとした中小企業は49.1%と約半数を占めた。

4~6月の実質国内総生産(GDP)成長率は年率7.1%減と、景気回復の足どりが重い。これに過度な円安が追い打ちを掛ければ、デフレからの出口も遠のきかねない。

政府・日銀は、連携して為替の安定に努めるとともに、補正予算の編成も含め経済を下支えする対応を望みたい。

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