e震災3年6カ月 広がる復興格差に目を向けよ

  • 2014.09.11
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年9月11日(木)付


東日本大震災から3年6カ月が過ぎた。

道路、鉄道などの基幹インフラは概ね復旧し、被災による家屋の損失などに対する公的支援もほぼ一巡した。人々はかつての暮らしを取り戻しつつあるかのように見える。

だが、被災の最前線に入ると、新たな問題が浮上していることに気付く。復興格差だ。被災者の二極分化が進み、その分、問題が複雑・多様化し、個別化している。

復興政策に、これまで以上のきめ細やかさが求められていることを自覚したい。

例えば、被災地最大級の仮設住宅群である宮城県石巻市の「開成団地」。長屋構造のプレハブ棟は空室が目立ち、櫛の歯が欠けたような光景を呈している。自宅再建や親族との同居が決まった人が、一人また一人と出て行くためだ。

「引っ越し組」と「居残り組」の分化はそのまま、「生活再建できた人」と「そうでない人」、つまりは「持つ人」と「持たざる人」に色分けできる。独り暮らしのお年寄りや失業者が後者に当たることは言うまでもない。

格差がもたらすこの"取り残され感"が、3.11の直接的な衝撃とは異なる"緩慢な仕打ち"となって、被災者を蝕んでいる。ひきこもり、うつ、暴力、アルコール依存、さらには家計破綻や離婚、子どもの登校拒否、そして時には自殺や孤独死となって。

格差はコミュニティーにも深刻な影響を及ぼしている。空室が目立つ仮設住宅では、自治会を解散するところが出始めた。補償金や弔慰金の多寡を巡って住民同士が疑心暗鬼になっている事例も聞く。

共同体の根幹をなす信頼関係が揺らいでいるとしたら、事態は予想以上に深刻と言わねばなるまい。

「その日を生きるのに必死だった震災直後より、今の方がずっと辛い」。そんな被災者の悲鳴にどう応えるか。あの日からの日々を懸命に生き抜いてきた人々を、格差という社会矛盾で絶望の淵に追い返すようなことは断じてあってはならない。

先頭に立つべきは、やはり政治だろう。その使命と責務を深く自覚し、公明党は「人間の復興」の旗印をいよいよ高く掲げ、きょうも被災の最前線に立つ。

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