e私たちにとって「地域包括ケア」とは?

  • 2014.08.18
  • 情勢/社会
[画像]メインイメージ

公明新聞:2014年8月18日(月)付



東京大学高齢社会総合研究機構
辻哲夫 特任教授に聞く



公明党は、団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、居住する地域で医療や介護などのサービスを一体的に受けられる「地域包括ケアシステム」の構築に取り組んでいる。私たち一人一人にとって、どのような意義があるのか。東京大学高齢社会総合研究機構の辻哲夫特任教授に聞いた。

―2025年の日本の姿は。

辻哲夫特任教授 後期高齢者(75歳以上)が人口の約5分の1を占める時代が訪れ、人類がいまだ経験したことがない超高齢社会になる。

その時、大きな問題になるのは医療の危機だ。75歳を超えた人は、集団として見ると心身が弱っていく。今も入院患者の半分は75歳以上であり、日本人の8割は病院で亡くなっている。このまま75歳以上がどんどん病院に向かえば、大都市圏を中心に病院が受け止め切れなくなる恐れがある。



老いても「生活者」であるために住まいに医療・介護を



―対策はあるのか。

辻 まずは要介護状態の原因となる生活習慣病を予防し、よく歩き、よく食べ、閉じこもらず社会に出て、できる限り健康でいることだ。ただ、それでも結局は老いて人の世話になり、亡くなることは避けられない。そこで求められるのが、「生活者」であることを支える在宅医療だ。

―生活者とは。

辻 高齢になれば、病気で入院しても完全には治らなくなる。そうした状況の中では、病気を抱えても生活の場で、好きなことをしながら人生を全うする生き方が大事になる。

しかし、そのためには在宅医療や介護、看護サービスが連携して「住まいにやって来る」体制を確立しなければならない。この体制が「地域包括ケアシステム」であり、これをいかに地域に定着させるかが、当面のわが国の最大の課題だ。

―在宅医療・介護の現状と課題は。

辻 在宅医療を行うかかりつけ医が少ない。また、医師や看護師、歯科医師、薬剤師、介護従事者など多職種の地域のネットワークをつくる必要もある。

このため東京大学では、千葉県柏市と共に地域包括ケアのモデルを構築する「柏プロジェクト」を始動。市と市医師会が主催する多職種連携研修に取り組んだ。研修では、多職種が議論などを通して互いの専門性を理解し、医師も在宅医療に積極的になっていった。各市町村でも、この研修を推進してほしい。

「本人・家族の選択と心構え」が大事

―住民の立場として、地域包括ケアをどう認識し、理解すればよいのか。

辻 最大のポイントは、厚生労働省の「地域包括ケア研究会」が提唱する「本人・家族の選択と心構え」だ。本人が望む生活を家族が支持し、地域も理解する。「本人の望み」とは、必ずしも在宅とは限らない。病院を選択してもいい。自ら老い方を学び、考え、納得できる人生を選択する。それが尊厳ある生き方につながる。こうした主体性が極めて大事だ。
多職種連携の仕組み構築へ 市町村議員の役割重要

―公明党に期待される役割は。

辻 今後、市町村が地域包括ケアシステム構築の軸足となるため、特に市町村議員の役割が重要だ。例えば、多職種連携研修の場合、市町村が地区医師会と話し合うことが、取り組みの第一歩になる。

市町村議員には、まず自らが老い方や、それを支えるシステムを学んだ上で市町村を応援し、盛り立ててほしい。それが住民を代表する地方議員の重要な仕事だと思う。公明党議員の取り組みに期待したい。

つじ・てつお 1971年東京大学卒業後、厚生省(当時)に入省。保険局長、厚生労働事務次官などを経て、2009年から東大高齢社会総合研究機構教授。現在、特任教授。編著書に「地域包括ケアのすすめ」(東京大学出版会)など。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ