e公明党「核なき世界」へ5つの提案

  • 2014.08.07
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年8月7日(木)付



公明党核廃絶推進委員会が公表した「8.6提言 核兵器のない世界に向けた法的枠組み構築へ積極的貢献を」には、五つの提案が盛り込まれた。それについて識者のコメントを紹介する。



<1> 2015年NPT再検討会議について
核兵器国も参加するNPT(核拡散防止条約)において、核兵器のない世界に向けた法的枠組みの検討に着手することを合意できるよう、明年春の2015年NPT再検討会議の議論を積極的にリードすること

<2> 2015年広島・長崎会合について
原爆投下70年の2015年秋に我が国で開催される広島での国連軍縮会議、長崎でのパグウォッシュ会議世界大会から、核兵器のない世界に向けた法的枠組み実現への力強いメッセージが世界に発信できるよう、政府関係者、専門家、科学者とともに市民社会の代表や世界の青年による参加の促進を図るなど、両会議を政府としても積極的に支援すること

<3> 2016年主要国首脳会合(サミット)について
NPDI(軍縮・不拡散イニシアチブ)広島宣言を受け、主要国の首脳が被爆の実相にふれる第一歩として、日本で開催される2016年主要国首脳会合(サミット)の首脳会合、外相会合やその他の行事を広島、長崎で行うことを検討すること

<4> 核兵器のない世界に向けた法的枠組みへの合意形成
核兵器禁止条約をはじめとする法的枠組みの基本的理念となる核兵器の非人道性や人間の安全保障ならびに地球規模の安全保障について、唯一の戦争被爆国として積極的に発信し、核兵器のない世界に向けた法的枠組みに関する国際的な合意形成を促進すること

<5> 核兵器のない世界を見通した安全保障政策についての発信
日米間のあらゆる場の議論を通じ、核兵器のない世界に向けての法的枠組みを見通した日米安全保障のあり方を検討し、核兵器のない世界に向けた新たな安全保障のあり方を世界に発信することにより、国際的議論を促進すること



外交の協調的雰囲気が重要



一橋大学大学院教授
秋山 信将 氏

核兵器廃絶への取り組みには二つの議論が必要となる。核兵器不使用の規範を作り上げるという理想を追求する議論、そして、安全保障における核兵器の役割を着実に減らしていく冷徹な議論だ。核廃絶の誓いを新たにする「8月6日」に発表された今回の提言では、めざすべき理想への道筋を掲げたものであり、これを目標に設定して前進してほしい。

そうした観点から、2015年のNPT再検討会議や、広島・長崎会合など大きなフォーラムの活用については大変示唆に富むものだ。

その上で期待を込めて注目したいのが、最後の項目にある、「核兵器のない世界に向けた新たな安全保障のあり方」についてだ。日本の安全保障政策は、米国の拡大抑止に依存している。提言の実現には、その中で核に依存する部分をどうしたらなくすことができるか、現実的な政策が求められる。日米間でどのように議論を進め、そのために何ができるのか。公明党は与党の一角を占めている。具体的な構想に注目したい。

また、核兵器廃絶を進める上で重要なのは、東アジアにおける安保環境や政治環境の改善だ。核兵器が介在しなくても安定的な戦略関係が得られるという協調的な雰囲気を醸成していく外交こそが必要だ。そうした関係をめざした外交努力が不可欠となる。

今、日中や日韓の首脳会談が実現できずに、冷え込んだ中韓との関係改善が待たれているところだ。その改善はアジアの核軍縮に向けた非常に重要な要素だ。中国との友好関係の構築に尽力してきた公明党に突破口を開く役割を果たしてもらいたいと期待している。



禁止条約実現への第一歩に



国際交流NGOピースボート共同代表
川崎 哲 氏

今回の提言で注目すべきは、「核兵器のない世界に向けた法的枠組み」という文言が明記されていることだ。これは核兵器禁止条約を意味する。

日本政府は核兵器の廃絶を訴えてはいるが、法的枠組みの検討については、「時期尚早だ」と距離を置いてきた。与党である公明党が法的枠組みの検討について言及し、国際社会の合意形成に向けて日本の主導的な働き掛けを提案したことは、大きな意味を持つ。禁止条約の実現に向けた第一歩となる提案だ。

この提言は、時宜にもかなっている。近年、核兵器の非人道性への国際的な関心が高まり、国際人道法によって核兵器を禁止するという考え方が提唱されているからだ。

核兵器はこれまで、国家の安全保障や軍備管理の問題とされてきた。ある種、パワーゲームの理論とも言える。しかし最近は、核兵器を人間の尊厳を脅かす人道性の問題として見る潮流が強くなっている。こうした動きを、今回の提言はうまく捉えている。核保有国の動きをただ見守るだけの国が多い中で、公明党の提言は先を見据えた重要な内容だ。ぜひ、政府・与党全体の議論にも生かしてほしい。

さらに提言では、「日米安全保障のあり方」と「核兵器のない世界」をセットに検討し、核兵器のない世界を見通した安全保障政策の必要性を指摘している。このような観点が与党の公明党から提起されたことは重要だ。しかしその中身は、必ずしも明確でない。

今後の注文として、提言にある「日米安全保障のあり方を検討」をより具体的な形にしていってほしい。日米で核の運用を制限するとか、先制核使用を禁ずるなどが考えられる。難題も多いが、政府をけん引するような役割を期待したい。

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