e名古屋議定書 国内制度の整備を早急に

  • 2014.07.22
  • 情勢/社会

公明新聞:2014年7月22日(火)付



生物資源の適正な利用に不可欠



多様な生態系の保護を促す国際的な活動が始まる。この取り組みは「名古屋議定書」と呼ばれ、生物多様性条約第10回締約国会議が開かれた名古屋で採択された。

議定書は、動植物の遺伝子情報といった「生物資源」の適正な利用の方法を定めている。議定書の発効は今年10月だが、日本は国内の制度整備の遅れで間に合わない。経済界が生物資源の利用規定について、成長分野である医療産業の足かせになる可能性を懸念しているためだ。

議定書は、企業の利益よりアマゾンなど生物資源を豊富に持つ新興国の利益保護に比重を置く。今までの世界経済の常識では、生物資源は無制限にある人類共有の財産と捉えられていたが、新興国の人口爆発による利用急増や地球温暖化の影響を受けて、生物資源は急速に枯渇し始めている。

例えば、医薬品の製造現場で薬の汚染の有無をチェックする際、カブトガニの血液が使われているが、乱獲で世界的に減少している。生物資源の枯渇は経済だけの問題でなく、人類の福祉向上を脅かす課題でもある。

新興国には、自国の資源を先進国に搾取されてきた歴史的経緯に対するしこりが今も根強い。生物資源の利用をめぐる議論には、1500年代の大航海時代にまでさかのぼり「先進国の成長は新興国から持ち出した資源を活用した結果であり、過去の利益を還元すべきだ」との新興国の声もあるほどだ。

名古屋議定書が求める取り組みは、新興国が抱く不公平感を是正し、先進国のメリットも十分配慮されている。議定書の規定は一見すると従来の常識に反するようだが、先進国と新興国の対立を乗り越え、世界全体の持続的成長を追求した結果である。

議定書への対応策に企業が関心を持つのは当然だ。国内の大手飲料メーカーの中には、製品に使う微生物がモンゴル由来である点に配慮し、一部の利益配分の方法を決めて、円滑な製品開発を継続する企業もある。

政府は生物資源の利用で実績のある企業を紹介し、議定書に対する理解を産業界に促してほしい。主に資源を利用する側の日本が、新興国の望む協力関係を築くことは外交関係の強化にも役立つ。

議定書は、先進国と新興国の協力関係重視が、限りある生物資源を将来も有効活用できる唯一の方法であると示したといえよう。世界有数の環境都市をめざす名古屋の名前を汚さないためにも、国内制度の整備が急務だ。

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