e改正行政不服審査法 公正で使いやすい制度に

  • 2014.06.16
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年6月16日(月)付



公務員は意識改革進め対応を



国民と行政のトラブルを解決する方法が大きく改善されることになった。

納得できない行政処分の解決には、行政事件訴訟がある。これは弁護士への相談など準備に時間と費用がかかり、しかも裁判は公開の法廷で行われるため、原告の心理的負担感も大きい。

そのため、手数料無料で簡易・迅速な救済方法である不服審査が多くの国民に利用されてきた。裁判所でなく、行政に対して直接、救済を求めるところが特徴である。トラブルを起こした行政自身が審査に当たることから、公正・中立性について長年、改革論議が続いていた。

今月成立した改正行政不服審査法は、使いやすさの向上と審査過程の公正さを高めることで行政の適正化を図る。2年後の施行に向け、政府は制度構築だけでなく、「国民本位の行政」実現へ自己改革も進めてほしい。

改正法は、国と自治体の行政に適用される。税金や社会保険料の徴収、交通違反の取り締まりや生活保護の支給認定など、行政が行う「処分その他公権力の行使に当たる行為」が、違法または不当な場合、「国民の権利利益の救済」を図り、「行政の適正な運営」の確保をめざすことを目的として掲げた。

そのため改正法は、不服の申し立てができる期間を現行の「60日以内」から「3カ月以内」に延長し、また、「異議申し立て」と「審査請求」という2本立ての仕組みを「審査請求」に一元化するなど使いやすい制度に変えた。

また、「審査請求」について、現行では不服を審理する職員に関する法律上の規定がないため、不服の対象となった処分を担当した公務員が、再び不服の審理に当たる可能性もある。改正法では、処分に関与しない職員を審理員とし、行政と国民の両者の主張を公正に聞いた上で裁決案をまとめさせることになった。

さらに、不服審査の裁決をする大臣は、原則的に採決案を新設の第三者機関に諮問し、判断の妥当性について有識者のチェックを受ける。これによって、審理の公正・中立性が確実に高まると期待されている。

2011年度の不服審査は国が約3万件、自治体が約1万8000件。行政事件訴訟の約2000件を大きく上回り、身近な救済方法として機能している。しかし、不服の認容率は国が約11%で、自治体は約3%と共に低い。国民の不満に対し、敏感かつ正確に対応できるよう、公務員の意識改革も迫られている。

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