e司法と福祉の連携 高齢者らの支援強化を

  • 2014.06.16
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年6月14日(土)付



法テラスの無料相談の要件拡充で



法務省の有識者会議が11日、日本司法支援センター(法テラス)の業務を見直し、高齢者や障がい者向けの無料法律相談を充実させることなどを盛り込んだ報告書を取りまとめた。政府は報告書を基に、法テラスの業務を定めた総合法律支援法の改正などを検討する方針だ。

法テラスは、法律問題で悩む人のための公的な相談窓口だ。経済力の乏しい人に、弁護士らによる無料法律相談や弁護士費用の立て替えを行う民事法律扶助などのサービスを提供している。

今回、有識者会議は高齢者らへの支援を強化するため、無料法律相談を受けられる範囲を通常の利用者より拡大する方向で検討が必要だと提言した。公明党の法曹養成に関するプロジェクトチームも今月5日に、有識者会議の提言と同様の要望を政府に申し入れている。ぜひ、早期に法改正してほしい。

有識者会議の議論の背景には、認知症の高齢者や知的障がい者が、詐欺被害などの法的トラブルを抱えながらも孤立しやすい問題がある。本人が的確な状況判断ができず、解決に至らないケースが増えているからだ。

被害を防ぐためには、司法と福祉、行政の関係機関による情報の共有と積極的な訪問支援が欠かせない。

例えば、法テラス東京事務所は東京都新宿区と連携して訪問支援を実施している。その結果、認知症高齢者の多重債務の整理や親族からの身体的暴力の解決などに成功している。

法テラスの弁護士らが、行政や福祉機関などと連携して出張相談などを行う「司法ソーシャルワーク」の取り組みは、全国各地で広がりつつある。

ただ、法テラスが実施する無料法律相談には収入や資産の要件があり、利用する場合は事前審査が必要だ。だが、認知症高齢者らは自分で判断して事前審査の手続きができない。これが、訪問支援が広がらない原因となっている。要件が緩和されれば、弁護士らによる訪問支援が普及すると期待される。

一方、有識者会議は、高齢者や障がい者の法的支援に精通した弁護士を確保するため、福祉機関の協力を得ながら、継続的な研修を行う必要性も指摘している。重要な視点であり、政府は前向きに検討すべきである。

法テラスが果たす役割は大きくなっている。法的支援の必要な人々が利用しやすい環境づくりを進めていかなければならない。

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