e力による現状変更けん制

  • 2014.06.09
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年6月7日(土)付



ロの孤立防ぐ建設的対話が重要
G7首脳会議



力による現状変更は許さない―。国際秩序を守るため、日米欧とカナダの先進7カ国(G7)があらためて認識を共有したことを歓迎したい。

5日に閉幕したG7首脳会議では、5月の大統領選に勝利し発足するウクライナのポロシェンコ次期政権を支持し、ロシアに対してウクライナ情勢の緊張緩和を求める首脳宣言を採択した。ロシアによるクリミア半島編入は不法なものであり、ウクライナ東部を不安定化させる行動は容認できるものではない。首脳宣言が持つ意義は大きい。

今回のG7は、ウクライナの主権を侵したロシアをG8の枠組みから排除する形で行われた。一方で、ロシアを必要以上に孤立させることは、力による新たな国際秩序の形成に挑む国同士の連携を促す結果になりかねない。ウクライナ情勢の安定やシリアの化学兵器排除などの問題でもロシアの関与は欠かせないものであり、ドイツのメルケル首相らも対話に基づく解決をめざす姿勢を示している。現実的な対応だといえよう。

日本政府は、ウクライナに対し、積極的に経済的支援を行う方針だ。ウクライナは、政治の混乱に加え、経済面でも深刻な状況にあり、国際通貨基金(IMF)の支援がなければデフォルト(債務返済不履行)の可能性が指摘されたほどだ。日本がウクライナの発展に貢献できれば、国際社会の安定に大きく資する。

首脳宣言ではこのほか、東アジアの緊張にも懸念を示し、領土などの権利を主張する一方的な試みに反対すると断言。国際法に従って、平和的解決を求める姿勢を明確にした。

さらに、日本側は、北朝鮮による拉致問題に関して、全面調査の実施と引き換えに、制裁を一部解除することへの理解を求めた。その結果、首脳宣言では、北朝鮮に拉致問題を含む人権侵害への対処を求める文言が盛り込まれた。北朝鮮をめぐっては、核やミサイル問題への各国の懸念は強く、日本として、国際社会との連携を強めていくことも求められる。

今後のサミットについて、ロシアが復帰するかどうかは、現状では不透明だと言わざるを得ない。しかし、主要国が同国への影響力を発揮する機会を持たない現状は望ましいものではない。

新興国の台頭で、あらためてその役割が問われているG7だが、安定した国際秩序を取り戻すために、危機感を共有し、建設的な解決を実現するための対話を重ねてもらいたい。

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