e人口減少と自治体 危機感と政策が地域変える

  • 2014.05.13
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年5月13日(火)付



子育て支援や雇用など抜本対策を



人口減少社会が直面する現実を浮き彫りにした試算を、強い危機感を持って受け止めたい。

民間の有識者らで構成される日本創成会議は先週、2040年までに全国の約半数(896)の自治体で、出産期にある20歳から39歳の女性が半数以下になるとの推計を発表した。これらの自治体では、出生率が上がったとしても、若年女性の流出が影響して人口減少が加速し、将来的には消滅の危機にさらされるという。自治体の人口は1万人を下回ると、必要な公共サービスの維持が難しくなるからだ。

自治体消滅の一因には、地方から都市圏への人口流出もあるという。特に、東京では今後、後期高齢者が激増するため、介護関係者の流入が見込まれ、一極集中にさらに拍車が掛かる懸念も強い。可能な限り対策を急がなければならない。

まず求められているのは、子育てしやすい環境づくりだ。近年、日本の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)は1.4程度にとどまっているが、国民の結婚や出産に関する要望や制度が実現した場合、出生率は1.8程度になるといわれている。

結婚や出産は、あくまでも個人の考えが尊重されるべきものだ。その前提に立った上で、子育て世代の育児を阻害する要因を、社会全体で取り除いていく必要がある。

試算を発表した日本創成会議も、いくつか改善策を提案している。例えば、従業員が子だくさんの企業には社会保険料負担などを優遇することや、地方から都市部に向かう人の流れを変えるために、中高年の地方への移住を促す住宅政策、税制上の優遇措置などだ。個別の政策は、効果や財源の慎重な検討が求められるが、目に見える形で実施されるならば、一定の効果は期待できる。

自治体にも相応の覚悟と努力が求められる。政策を総動員すれば活路は開ける。実際に、育児支援策を全国屈指の水準に拡充することで、急減する出生率が上昇傾向に転じた自治体もある。若者の雇用創出、地域の活性化などに粘り強い取り組みを続けてもらいたい。

日本創成会議が個別の自治体名に言及してまで消滅の可能性を論じた背景には、人口減少の影響を、地域の現実的な課題として共有してもらう狙いがあったからだという。地域社会の未来について、より踏み込んだ議論を進めていきたい。

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