eがん研究10か年戦略 医療現場に届く成果を

  • 2014.04.30
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年4月29日(火)付



国際的に活躍する人材の育成も



国のがん研究の方向性や重点分野をまとめた新たな「がん研究10か年戦略」が今年度から始まった。がんの根治につながる有効な治療法の研究開発を進めてもらいたい。

新戦略は、がん対策基本法や基本計画の方針を踏まえ、研究に特化して策定された。目標として、(1)難治性がんの根治(2)患者と家族の苦痛軽減(3)予防と早期発見(4)がんとの共生―を掲げている。

1984年度からスタートした国のがん研究は、3次にわたる10年単位の総合戦略に基づいて進められてきた。これまでの研究成果によって、生存率は改善傾向にある。だが、膵がんや胆道がんのように、いまだに治療困難ながんも少なくない。がん死亡者の約半数は、5年生存率が50%以下の難治性がんの患者だ。目標の第一に掲げたのは、このためである。

具体的な研究分野として、がんの解明や、患者に優しい医療技術の開発など8項目が挙がっている。今回は、小児や働く世代、高齢者など世代別のニーズ(要望)に応える医療研究の強化を柱に据えたことが一つの特徴だ。

小児がん経験者は化学療法や放射線療法による健康障害など、治療の後遺症に苦しむケースが多い。一方、体力が低下した高齢者には、外科手術や抗がん剤治療が大きな負担になる。

日本人の2人に1人は、がんにかかる時代である。世代別のきめ細かな対策は欠かせない。ライフステージや、個人の状況に応じた適切な治療が受けられる環境づくりをめざしてほしい。

わが国の研究成果は、医療現場に確実に届く体制になっているだろうか。長年にわたって指摘されている。

例えば、優れた基礎研究が行われているにもかかわらず、創薬などの実用化に結び付くケースが極めて少ないといわれている。欧米で使用が認められている薬が日本で承認・使用されない「ドラッグ・ラグ」の問題もある。

政府は今年度、新しいがん戦略に基づき、文部科学、厚生労働、経済産業の3省が連携し、基礎研究から実用化に向けた研究までを一体的に進めていく方針だ。万全な体制を整えて推進してほしい。

各研究を進めるためには、国際的に活躍できる研究人材の育成も不可欠だ。女性研究者の参画を促進することや、若手研究者への支援など、戦略的な研究者育成システムを確立することが求められる。

研究の成果は、人の命に直結する。目に見える進展を期待したい。

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