e地球温暖化対策 行動を促す政策が重要

  • 2014.04.17
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年4月17日(木)付



大胆な国際連携に日本が指導力を



国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は今週、第3部会の地球温暖化対策の報告書を公表した。IPCCは三つの部会で構成され、課題別に報告書を出す。今年10月には、各報告書を一つにした第5次評価報告書が承認される。全世界で800人を超える科学者が携わる報告書は、地球の客観的な実情を示す一級の資料だ。

IPCCのパチャウリ議長が「温暖化の抑制の電車に、全ての社会の人が早く乗らないといけない」と強調するほど温暖化は進んでいる。

先に公表された第1部会の報告書は、世界が温暖化対策を取らない場合、ほとんどの陸地で極端な高温状態が今後頻発すると指摘。第2部会の報告書は、温暖化が農作物の生育不良を招き、世界規模での食料危機や紛争を引き起こす可能性にまで踏み込んだ。

国際社会には、平均気温上昇を将来にわたり2度未満(産業革命前比)に抑える共通目標があるが、第3部会の報告書は温室ガス排出量を2050年に10年比4~7割に削減し、今世紀末にゼロ以下にしなければ目標維持は難しいとした。報告書は課題解決策として、世界の電力供給に占める再生可能エネルギー(再エネ)など低炭素電源の比率を、今の約3割から8割以上(50年時点)に上げる案を挙げるが、ハードルは高い。

報告書の試算では、世界の消費拡大率を最大0.14ポイント抑制すれば達成できる。ただ、温暖化対策は、各国の利害が対立し、進んでこなかった歴史もある。消費縮小策は、開発途上国に過度な負担を強いるとして人気がない。

むしろ先進国を含む世界全体の経済成長を促し、その恩恵で開発途上国が無理なく環境技術の導入や消費抑制に取り組めるような政策誘導が大事ではないか。開発途上国の昨年の経済成長率は、前年比4.7%と世界経済のけん引役を果たしている。

経済成長は技術進歩と再エネ普及を促す。かつての日本も高度経済成長の時代に公害問題を引き起こし、環境保護と経済発展の両立が不可欠であることを学んだ。世界に誇る高効率の火力発電や水質保全技術は、過去の経験がもたらした日本の財産だ。

省エネルギーを促すスマートシティーを大陸単位で構築するなど大胆な国際連携を模索できないか。第5次評価報告書が出る秋以降、世界の温暖化対策は一斉に動き出す。日本は昨年設定した温室ガス排出削減目標の達成に本腰を入れ、環境立国としての指導力をいま一度発揮すべきだ。

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