e教えて!新たな武器輸出の三原則

  • 2014.04.02
  • 情勢/国際

公明新聞:2014年4月2日(水)付



国際貢献、災害協力へ積極的に対応
目的外使用、第三国移転は適正に管理



政府は1日、「武器輸出三原則等」に代わる「防衛装備移転三原則」を閣議決定しました。新原則を定めた理由などについて解説します。



なぜ策定するの?


地雷除去など日本の技術に高い評価。例外重ねる運用に限界

これまでの武器輸出三原則等が数々の例外措置を重ね、制度運用が複雑化したためです。

1967年に佐藤栄作首相が、(1)共産圏諸国(2)国連決議で禁止された国(3)国際紛争の当事国やその恐れのある国―への武器輸出を認めないと表明。さらに76年に三木武夫首相が、前述の(1)~(3)以外の地域でも武器の輸出を慎むと答弁し、事実上、全ての武器と関連技術の輸出を禁止しました。

以上が旧原則の柱ですが、自衛隊の国連平和維持活動(PKO)要員が任務で使う小銃を国外に持ち出すことも武器輸出に当たるため、その度に例外措置が取られました。また、明らかに日本の安全に役立つ米国との弾道ミサイル防衛の研究をするにも例外化が必要でした。このように、やむを得ない例外化を積み重ねてきた結果、今では21回に上り複雑になるとともに、例外化に特にルールがあるわけでないため、例外化による輸出(移転)が際限なく広がるのではとの懸念もありました。つまり制度運用は限界に達していたといえます。

一方、これまで例外措置の対象となった品目を見ると国際平和協力活動で使用する油圧ショベルといった重機や地雷探知機、旧日本軍が中国に遺棄した化学兵器の処理で使う防護服などが含まれています。こうした分野における日本の技術に対する評価は高く、国際社会からは災害復旧や地雷除去支援などの分野でもっと日本の機材を出してほしいと求められていました。

これらを踏まえ、決定したのが今回の新原則です。日本の防衛産業に武器輸出を奨励するわけでも、集団的自衛権を行使して海外での武力行使を可能にするための布石でもありません。



戦争に加担するのでは?


平和を脅かす場合は認めない
紛争当事国などには輸出禁止

その指摘は全く当たりません。新三原則は、(1)移転を禁止する場合の明確化(2)移転を認める場合の限定と、厳格審査の実施および情報公開(3)目的外使用や第三国移転防止のための適正管理―の三つの柱からなり、国際的な平和や安全の維持を妨げる恐れがある場合は移転を認めません。

具体的に見ていくと(1)では、「こうした地域には移転しない」という門前払いの地域を明確にしました。化学兵器禁止条約などの国際約束や国連安保理決議に違反する国や、紛争当事国への移転は認めません。

(2)は、平和貢献・国際協力の積極的な推進や、邦人保護など日本の安全保障に役立つ場合にのみ移転を認める原則です。厳格な個別審査を通して決定します。

(3)は、移転した装備品が容易に目的外に使用されたり、第三国に移転されることを認めない原則です。

加えて、公明党の主張で情報公開が徹底されました。移転の許可状況については、年次報告書を作成して国家安全保障会議(NSC)に報告し、国民に公表します。特に重要な案件はNSCで審議されますが、その内容も公開されます。



歯止めはあるの?


移転可能なケース明確に限定
経済的利益のためには許可しない

そもそも現行法(外為法)でも、防衛装備品の移転に関して日本は世界で最も厳しい国の一つです。

旧原則の下で、2012年度は約2200件の防衛装備品を移転しています。そのうち約1700件は自衛隊などが使用する装備品等の修理や点検に関するものですが、これについても一点ずつ詳細にチェックしてきました。これらの法制度は変わらないので、今後も厳しい管理が維持されます。

その上で、今回の新原則で移転可能なケースが明確に限定されたため、例外措置は認められなくなります。日本の安全保障に関わりのない単なる経済的利益のための移転はできない仕組みとし、これまで以上に厳格に運用されます。

旧原則の下では、必要最小限の武器輸出を認めざるを得ない場合にその都度、官房長官談話で説明し、慎重に対応してきました。その日本の姿勢は、平和国家としての信頼を築いてきました。新原則でもこの理念は変わりません。

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