e消費税の価格転嫁

  • 2014.01.17
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年1月17日(金)付



中小企業の泣き寝入り防げ
不当な取引の監視態勢拡充が必要



消費税率8%への引き上げまで、3カ月を切った。新税率への対応作業が、行政や企業で行われている。

企業が商品やサービスの価格に上乗せし、消費者に最終的な負担を求めるのが、消費税の仕組みである。しかし、消費税率が5%に引き上げられた際、下請け事業者に対して、増税分を商品価格に転嫁しないよう働き掛ける大企業があった。

主因は、バブル経済の崩壊で景気後退が深刻化し、大企業が売り上げの減少を防ごうとしたからだ。価格転嫁できなかった分は自らの利益を削り、泣く泣く対応する中小企業が相次いだ。

大企業が優越的な立場を利用して、下請け事業者に負担を強いる事態を今回こそ防がなければならない。悪質な行為を取り締まらないと、来年10月に予定されている10%への引き上げ後も中小企業が苦しむ。

自公連立政権による経済再生策の効果で、景気は上向いている。その恩恵を最も受けているのが大企業だ。大企業が不景気を言い訳に、中小企業に不当な圧力をかける理由は見当たらない。日本経済の屋台骨を支える中小企業に不利益を押しつけることがあれば、本格的な景気回復にも悪影響を及ぼしかねない。

全国中小企業団体中央会は2012年12月、増税分の価格転嫁を実施できるかを全国の会員組合に調査した。転嫁を「できない」と答えたのは、48.7%に上った。下請け業界の懸念は、調査から1年が経過した現在も「解消したとは言い難い」(同中央会)状況だ。同中央会が行う特別相談窓口には消費増税を前に、価格転嫁に関する切実な相談が数多く寄せられている。

昨年10月に施行された消費税転嫁対策特別措置法の狙いは、大企業の顔色をうかがわなくても、中小企業が価格転嫁できる環境を整備した点だ。価格転嫁しないように圧力をかけられた中小企業が通報すれば、公正取引委員会が立ち入り検査を実施する。悪質な場合は、社名も公表する措置を設けた。通報した企業は、国が責任を持って保護する。通報した企業が報復を受けない態勢をしっかり確立しなければならない。

内閣府にも価格転嫁に関する相談センターはあるが、中小企業がより気軽に相談しやすい環境づくりを進めてほしい。違法行為がないかの聞き取り調査を全国で行う「転嫁Gメン」の増員も検討すべきである。

政府は、万全の態勢を整えてほしい。

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