e福島復興新指針 被災者目線で具体化急げ

  • 2013.12.27
  • 情勢/解説

公明新聞:2013年12月27日(金)付



「全員帰還」原則を転換 丁寧な説明と親身の対応を



14万人に上る避難者の生活再建は待ったなしの状況にある。早急に具体策をまとめ、遮二無二、復興を前へと進めなければならない。

自民、公明両党による先月初めの第三次提言を受け、政府が東京電力福島第1原発事故からの復興加速に向けた新たな指針をまとめた。

避難住民の「全員帰還」という従来の原則を見直すなど、福島の実情を直視した現実路線に転換したのがポイントだ。除染、廃炉・汚染水対策、賠償問題などについても、前政権が敷いた「東電任せ」の姿勢をあらため、国が前面に立つことを鮮明にした。

「町民の生活再建を支える方向性が示された」(渡辺利綱・福島県大熊町長)など、地元自治体からも、概ね評価する声が上がっている。

あとは、指針に沿った政策の具体化と、その実行力だ。単なるメニューの提示だけで終わらぬよう、首相はリーダーシップを発揮し、被災者が実感できる復興を着実かつ果敢に推し進めてほしい。

新指針の柱は、8万人以上を数える避難指示区域の住民の生活再建支援策だ。「戻る人」「戻りたいけど戻れない人」「移住する人」と、多様化する住民の事情に合わせてそれぞれの支援策を示し、避難者の選択肢を増やした。

帰還をあきらめる人が増えている現実を踏まえた措置ではあるが、事は手放しで評価できるほど単純ではない。自らに責任のない原発事故で故郷を追われた人々に帰還か移住かを迫るのだから、捉えようによっては、これほど理不尽なことはないからだ。

現実問題としても、原発周辺自治体の人口減少や地域コミュニティーの弱体化が懸念される。政府・与党にとっても、苦渋の決断だったことは想像に難くない。

悩ましい問題ではあるが、新指針を決めた以上、政府には、この不条理さにまで責任を持つ覚悟が求められる。帰還、移住どちらを選択する住民にも新生活への希望を満たし、地元自治体の復興支援にも万全を期さねばならない。

そのためにも、具体策の取りまとめでは、どこまでも被災者の目線に立ち、腹蔵なく地元と話し合うことが肝要だ。丁寧な説明と、親身になっての対応が欠かせない。

福島県によると、同県ではついに、震災関連死が直接死を上回った。福島が依然、過酷な試練の只中にあることを物語っている。新指針に基づく支援の具体策は、血の通った、寄り添う精神に溢れたものでなければならないことを重ねて強調しておきたい。

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